『いつかの夏へ』
3
「どーした?」
「なにが?」
「なんかニヤニヤしてる」
食べ終わった雅樹が私の顔を覗き込んでいた。
(ニヤニヤって…)
顔が赤くなるを感じて慌てて弁当の上に顔を伏せた。
「お、美味しかった?」
「ん。まぁまぁ」
それでも弁当箱はきれいに空っぽだった。
私は弁当箱の中を確認する。
雅樹の好きな甘い玉子焼きは入っているけれど今日はから揚げの代わりにハンバーグを入れた。
(やっぱりから揚げ入れてないからかな)
不安になって表情が曇る。
「バカ、いつも通り美味い。ごっそさん」
雅樹は空になった弁当箱をハンカチで包むと地面に置いた。
その一言でまた顔全体の筋肉が緩む。
私は照れ隠しの為に話題を変えた。
「そうだ…テストもうすぐだけど本当にどうするの?」
「カンニング」
「そうじゃなくって!ノートコピーするから勉強しよ?」
「…考えとく」
学校にいる時の雅樹はいつもこんな感じ。
特に勉強とか授業のことになると途端に機嫌が悪くなる。
(このままじゃ…一緒に卒業できないかもしれないのに)
少し落ち込みながら弁当箱を片付けていると雅樹が私の肩を抱いた。
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