『いつかの夏へ』
1
トン、トン、トン、トンッ−
お弁当を持って屋上へと続く階段を駆け上がる。
それが最近の私の日課。
「ハァッ、ハァッ…」
屋上のドアを開けて息を切らしながら空を仰ぐ。
真上から照らす太陽はもう夏が近いことを知らせている。
(って早くしないと…)
屋上の入り口の反対側に回って覗き込む。
「発見!」
「おはよー!真子ちゃん!」
「おはよう!てっちゃん!」
いつもの指定席にいつもの姿を見つける。
てっちゃんは吸っていたタバコを消すと入り口の屋根に投げ捨てる。
(はぁ…また学校で堂々とタバコ…)
私は見て見ぬフリしながら二人のそばにしゃがんだ。
「学校来てるなら授業出なよー。もうすぐテストだよ?」
「真子ちゃんのノート写させてよー。ジュース奢るからさー」
「ジュースよりパフェ!」
「おっけ!契約成立っ!」
二人はパンッとハイタッチしてニカッと笑った。
「…太るぞ」
てっちゃんの横でマンガを顔の上に乗せて寝転がっていた雅樹がボソッと呟いた。
夏服の白い半袖シャツのボタンをいくつも開けてその隙間から覗くネックレスが太陽の光を浴びて煌く。
「…っ!雅樹には見せてあげないからね!」
見えないのをいい事に雅樹に向かってベッと舌を出す。
マンガをどけた雅樹はゆっくりと視線を私に向けた。
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