『いつかの夏へ』
24

 色々な体位を試すのを嫌がった真子が正常位の他に好きだといった体位。

 真子は雅樹の腰に足を巻きつけるとさっきと変わらずにしがみついて、より深くなった繋がりに色っぽい吐息を漏らした。

「ホント……これ好きだな」

「はぁ……ぁ、だって……これなら雅樹ジロジロ見ない……もん」

 ギュッとしがみついた真子はまるで子供のように幼い口調になった。

(全然……変わってねぇ)

 同じことを聞いた覚えのある雅樹は笑いを漏らしながら真子の腰を抱いて肩に顔を乗せた。

 突き上げるというよりは揺するように身体を揺らしていると二人の体が一つになっていくように動きも呼吸も同調する。

 雅樹は揺りかごのように揺らしていた身体を止めた。

「真子……もう、気にすんなよ」

「……ん?」

「遅くなったけど……お前の身体、俺でいっぱいにしてやるから。嫌なことも怖かったことも全部消してやる。だから思い出すのは俺だけにしろ、分かったな?」

「ま、さき……」

「その代わり覚悟しとけ、離してやれねぇぞ」

「……ん、うん、うん……」

 涙交じりの声で何度も返事をする真子の髪を撫でる雅樹は顔を伏せたままうなじに唇を寄せた。

 小さく震える真子の身体を抱きしめ、暖かい雫を肩で受け止めながら痞えていたものが落ちたような安堵を感じた。

(長かったよな……)

 最後に抱きしめた真子はボロボロに傷ついて泣き腫らした顔。

 それは永遠に消えることはないけれどこれから色んな表情をする真子が増えていけばそれでいい。

 笑ったり泣いたり怒ったり、俺にしか見せない表情だったり。

 あの時のことも全部ひっくるめて俺たちがこれからを生きていけば……。

「雅樹……ねぇ……」

 真子の柔らかい身体を抱きしめたまま思いを馳せていると耳元で名前を呼ばれて顔を上げた。

 涙で睫を濡らした真子が少し困ったような視線を向ける。

「……考え事?」

「どうした?」

「どうした……って、今……どんな状況か……忘れちゃっ、た?」

 拗ねたように口を尖らせる真子に雅樹は身体を揺らしながら笑った。

 膝の上に乗った真子の身体も同じように揺れると真子はさらに膨れっ面になる。

「もう……いいっ!」

「そんなこと言うなよ。ほら……まだ中にいるの分かるだろ?」

 真子の腰を回すように動かしてみせると真子はまだ主張している雅樹の昂りの存在を思い知った。

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