『いつかの夏へ』
23
真子はそろそろと顔から手を離すと上目遣いで雅樹を睨んだが、すぐにとびきり優しいキスをされてしまった。
「怒ってんの? 照れてんの?」
「両……方」
「何だそれ。それより身体は? 平気か?」
可笑しそうに笑っているけれど目だけ心配そうに真子を見つめる雅樹は、汗で額に張り付いた真子の前髪を後ろに流しながら声を掛けた。
真子は「大丈夫」と頷き返すと、少し言いにくそうに口を開いた。
「あの……雅樹さっき……なのに、あの……もう?」
シドロモドロの真子の言葉に雅樹はプッと吹き出してその証明を押し付けた。
今にも押し入って来そうな熱い塊に身体をビクッとさせる。
「最近は忙しかったからしてなかったし、十年振りってのもあったしなー」
(最近はしてなかったって……)
じゃあいつもはしてるんだ? と真子は思ったけれどそれを聞く勇気はなくて胸の奥にしまいこんだ。
「だから……十年分な? 幸いまだ時間はたっぷりあるからな」
「じゅ、十年分って……そんなっ……えっ、む、無理だよっ」
「無理って言葉が一番嫌いなんだよ。やってみなきゃ分かんねぇだろ?」
「で、でもっ……」
「うるさい口は塞いでやる」
まだ無駄な抵抗をしようとしていた真子の口は宣言通り塞がれてしまった。
乱暴なキスをしているくせに身体に回された手は優しく肌を撫で、閉じかけた真子の足を広げると雅樹が再び中に入ってくる。
(嘘……もう、平気かも……)
痛みよりも快感が強い、一度受け入れた真子の身体は雅樹を歓迎した。
「すげぇ……やっぱまだキツイな。でも、すげぇいいよ」
「ンッ! もっと……しても平気だから」
余裕を見せる雅樹はゆっくりと腰を動かして少しでも真子から快感を引き出そうとしていた。
だが真子の言葉に嬉しそうに唇の端を上げた。
「気持ちいいのか?」
「んっ、もっ……痛くない、から……あぁ……ッ」
「気持ちいいって言えよ。どこがいい? ここか?」
「気……持ちいいっ……そこぉ」
ゆっくりとした動きは変えないまま、雅樹は中を探るように時々角度を変える。
先端で柔らかくなった中を抉られるように動くたびに真子は甘えた喘ぎ声で雅樹を悦ばせた。
(真子……真子……)
自分の腕の中で乱れる姿は何度も夢に見て来た、でもその姿はいつでも高校生の真子でしかなかった。
今も大人になった真子を抱いているはずなのになぜかあの頃の真子の姿が重なる。
「真子……」
「んぅっ! はぁ……あぁん」
身体を起こした雅樹は真子を抱き起こして対面座位にすると真子は一際甘い声を漏らした。
(そうだ……この声だ……)
身体はすっかり大人の女性なのに、声だけは変わらず甘えているような鼻にかかる声。
普段の真子からは絶対に聞くことの出来ない、自分だけが知っている声はあの頃から何一つ変わっていない。
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