『いつかの夏へ』
22

「一回目は勘弁な?」

「…………?」

 まるで独り言のような雅樹の言葉の意味が判らずに首を傾げていると抽送が始まった。

 まだ馴染まない真子の中を熱い塊が何度か往復する。

「あぁっ! す……ごい、イッ……ウゥッ……」

 快感まではまだ程遠く痛みの方が強かったが、十年振りに受け入れた身体は悦びを知ろうとしている。

 待ちわびた雅樹の熱さに身体は少しずつ記憶の引き出しの解放を始めた。

「ハッ、ハァッハァッ……」

 荒い呼吸を繰り返す雅樹の動きは激しさを増す。

 息苦しくなるほど突き上げられ強い痛みに真子が息を詰めると雅樹の動きが止まった。

「ハァッ……ハァァッ……」

 強張った雅樹の体がゆっくりと弛緩していくのを感じた真子はしがみついていた手を緩め雅樹の顔を見た。

 肩で息をしている雅樹は真子の額にキスをすると身体を起こした。

(もしかして……?)

 溶けるような熱さが胎内から離れていくことに寂しさを感じた真子だったが、わずかに顔を上げて雅樹の動きを目で追っているとようやくさっきの言葉の意味を理解した。

「バカッ……そんな物足りなそうな顔で見んな……」

 ようやくいつもの雅樹が戻ってきた。

 口調はからかっているのに少しだけ照れくさいのかバツの悪そうな顔を横に向ける。

「次は、大丈夫だから」

「えっ……次って」

 太ももを左右に押し広げる雅樹が真子と向かい合うと、驚いたように真子は目をパチクリさせた。

 そして身体の中心に押し付けられた熱い塊に気付いた真子は慌てたように肘で身体を支えるように上半身を起こした。

(嘘……だってさっき……)

 雅樹がゴムを外して処理をしているところを見たはずなのに、そこにはゴムに包まれた雅樹の昂りがあった。

「お前さ……そんなにエロかったっけ?」

「えっ!?」

「昔は……こう、恥じらいっつーの? そんなんあったくせに……まさか覗きこまれる日がこようとはなぁ」

「ち、ち、ち、違うのっ!」

 自分のしていることに気がついて真子は慌てて身体を倒して枕を顔の上に乗せた。

(もうっ! バカバカバカッ!)

 触れなくても分かるほど熱くなった顔に強く押し付けていた枕は一瞬にして雅樹に剥ぎ取られてしまった。

 隠す物がなくなった真子は両手で顔面を覆ったがそれも剥ぎ取ろうと雅樹が手首を掴む。

「真子? 顔を見せろって」

「ヤッ!」

「ヤッって……なぁ。俺、キスしたいんですけど?」

(もう……そうやってすぐ……)

 普段はあまり使わない優しい声は鋼のようなガードも簡単に取り除いてしまう。

 
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