『いつかの夏へ』
21
ただ求められるままの激しいキスをした雅樹の唇が離れると真子は胸を大きく上下させながら酸素を吸い込んだ。
(雅樹……どうしたんだろう……)
キスを終えた雅樹の様子がおかしいことに気付いた真子が身体を起こす。
「雅樹……? どうしたの?」
「なぁ、久しぶりだと……痛かったりするか?」
「わ、分かんない……」
「真子……俺、もう我慢出来そうにねぇ……」
雅樹は真子に体重をかけないように気を使いながら真子をベッドに押し倒した。
熱く速い呼吸を繰り返す雅樹の両手の拳はきつく握り締められている。
「……いいよ」
「でも、傷付けたくない。ホントはもっと慣らしてからとか……頭では分かってんだけど……」
「大丈夫だよ。雅樹に傷付けられるなんて思わない。痛くても……私は平気、ね?」
暴走しそうな自分を鍛えられた精神力で繋ぎとめていた雅樹がホッとしたように息を吐く。
まるで熱病に冒されたように苦しそうに息を吐く雅樹の額には汗が滲んでいる。
痛いほど張りつめた自身はもう限界で、たとえそれが自分の手であっても触れただけで爆発してもおかしくないほどだった。
「どうしても……我慢出来なかったら、言えよ?」
薄いゴムを付けながら雅樹が念を押すように呟く。
(こんな時まで優しい……)
人は見た目で雅樹を判断する。
怖い、近寄りがたい、乱暴者、口が悪い、確かにそうかもしれないけれど、でも真子にとってはこんなに優しく愛してくれる人は他にいないと断言出来た。
「フゥッ……」
雅樹が短い息を吐いた後、緊張したように息を詰めたのが真子に伝わる。
真子は怖くないと思っていても身体は自然と強張り、雅樹の二の腕を掴んでその時を待った。
「――――ッ」
初めての時ほどではないが鈍い痛みが下腹部に走り真子は思わず顔を顰めた。
雅樹は動きを止め三分の一ほど埋まった自身を引き抜こうとする、だが真子は首を横に振りそれを制した。
眉間に皺を寄せ唇をきつく閉じているのに微笑もうとする真子の姿、雅樹は泣きたくなるほどの愛しさに優しく髪を撫でることしか出来なかった。
「雅樹……大丈夫、だから……ね?」
真子の手が雅樹の頬を撫でる、子供あやすような優しい声と仕草に雅樹は目を伏せ真子の手の平に頬を寄せるた。
(ずっとこのぬくもりが欲しかったんだよな……俺もお前も……)
ようやく体から力みが抜けていくと雅樹は瞼を持ち上げて静かに微笑んだ。
「この方が好きだったよな。きつかったら爪立てていいからな」
真子の手の平にキスをして自分の首に掴まらせる、それから雅樹は真子の背中に手を回するとゆっくりと覆い被さった。
二人の胸がピッタリと合わさり二人はキスをしながら肌を通して伝わる相手の鼓動が一つに溶けていくような錯覚。
真子の手が求めるようにしがみ付くと、雅樹は真子の身体を優しく抱きしめたまま腰を浅く前後に動かした。
「ハッ……真子、真子……真子……」
「んん……大、丈夫」
余裕のない雅樹の声が何度も何度も真子の名前を呼ぶ。
ずっと閉ざされていた部分を押し広げられる痛みはある、だが名前を呼ばれるたびに愛しさが溢れる真子はしがみ付く手をきつくした。
互いに抱き合う腕に力が篭ると雅樹の腰に力が入った。
「クゥッ! 真子、すげぇ……俺、ハァ……やべぇっ」
「うぅっ……雅樹っ、キス……してっ」
すべてを収めた雅樹は昂る感情を抑えながら途切れ途切れに言葉を吐いていると痛みに耐えている真子にキスを求められた。
しっかりと閉じた瞼から涙を零す真子の頬を何度も撫で優しいキスを繰り返した。
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