『いつかの夏へ』
20

 荒くて浅い呼吸、汗ばんだ肌、シーツの上に広がる乱れた髪。

 込み上げてくる何かを耐えるためか細い指はシーツを掴みきつく閉じられている。

 浮き上がる鎖骨に寄せられていた唇はゆっくり下りて薄く色付く肌の手前で止まった。

「声、聞かせろよ」

 柔らかい内ももを撫でていた手が下唇を噛みしめている真子の唇に触れた。

 無理矢理こじ開けられるかと身構えた真子は、思いがけず優しく唇を撫でる指の動きに自然と唇を開く。

 男らしい節ばった指は唇を撫でるだけでは足りないのかそのまま口腔へと滑り込む。

「んっ……チュッ、クチュ……」

 真子は目を閉じたまま愛しい人の指に舌を這わす。

 指の形を確認するように舌が指を滑るように動くと雅樹は短く息を吐き、白い肌と色付いた部分の境目をチュッと吸い上げた。

「ふぁっ……ん」

 口に指を含んだまま真子が声を漏らす。

 まるで身体の一つ一つを思い出すかのように体中に触れるだけのキスをした雅樹は最後まで触れなかった部分に唇の先で軽く擦った。

 果実が熟すように色付いた小さな蕾は待ちわびていたように震える。

 硬さや感触を楽しむように何度も下唇を掠めるように触れさせ、真子の身体がせがむように弓なりになると舌先で一撫ぜした。

「あっ、ん」

 口から指を引き抜かれ名残惜しいのか、それともようやく待ちわびた場所への愛撫のせいか、真子の口から甘えたような声が漏れた。

 雅樹はチラッと真子の顔を覗き見ただけで愛撫を再開した。

 舌先で押し込むように舐めたかと思えば唇で挟みこみ吸い上げる。

「んぅっ……あぁっ、ん……音、恥ずかしい……」

 舌と肌が絡む濡れた音はたしかに卑猥で雅樹は楽しんでいたが、真子はわずかに眉間に皺を寄せて首を横に振っている。

「こっちの音ならいいか?」

「え……?」

 止めるつもりのない雅樹は愛撫を続けながら楽しそうに声を掛け、潤みきった瞳が自分を見ていることを確認してから真子にたっぷり濡らされた指を下へと運ぶ。

 だらしなく広げられた足、膝から内ももをなぞるように指は上っていく。

「ンンッ!!」

「真子っ……すげっ、なんで……」

「い、言わないでぇっ! あぁっ、いや……いやっ……」

 十年振りに触れる真子の大切な場所。

 指先が触れただけで様子が違うことにすぐに気がついた雅樹は指先に絡むヌメリを掬い上げた。

 まるで知られたくない秘密を知られてしまった時のように真子は恥ずかしさを隠すように身体を揺らし抵抗を見せたがすぐに雅樹の指に酔わされる。

 何度も何度も往復する指は偶然なのかワザとなのか膨れた花芯を掠めるだけで離れていく。

「あぁ、んっ……雅樹、ねぇっ……あぁっ!」

 呼びかけても返事のない不安からか目を開けて雅樹の姿を探そうとした真子の目の前に雅樹の顔が現れた。

「真子っ!」

「んぅっ……」

 まるで奪うような乱暴なキス、二人の歯が当たり音を立てた。

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