『拍手小説』
も1-4

『君だから』


「どーして?早く見せて?」

 二人はリビングで睨み合っていた。

 陸は麻衣が後ろに隠している物に手を伸ばそうとするがその度に麻衣は逃げ出した。

「やだ…あんなの見たら出せない!」

 そう言う麻衣の顔は拗ねている。

 あんなのというのは客からのプレゼントの山。

 そして麻衣の手の中にあるのは一番欲しい麻衣からのプレゼント。

「麻衣が選んでくれたのならどんな物でも嬉しいに決まってるでしょ?」

「やだ…別なの買い直して来る!」

「そんな事しなくていい。金額じゃないでしょ?」

 麻衣はうぅっ…と小さく唸りながら後ろに隠していた大きな包みを出した。

 陸は嬉しそうに笑うと麻衣ごと抱えてソファに座った。

「開けていい?」

「もう開けてるくせに…」

 麻衣を膝に抱えたまま陸の手はすでに袋のリボンを解いていた。

 ガサガサと袋を開けた陸の顔は驚いた表情になった。

 麻衣は陸の顔と袋の中身を心配そうに交互に見比べた。

「何着あるの!?」

 陸は袋の中から中身を取り出した。

 それはパジャマだった。

「もしかして全部ペア?」

 驚く陸に麻衣は照れくさそうに頷いた。

 驚くのはペアというだけじゃなかった。

 二組ずつのパジャマが全部で三種類入っていた。

「お揃いのパジャマ着るのが夢だったの…」

「麻衣…もうっ!可愛いっ!!」

 陸はパジャマを横に置いて麻衣を抱きしめた。

 恥ずかしそうに俯く麻衣に何度もキスをしながらシャツの裾を掴む麻衣の手を取って指を絡めた。

「顔見せて?麻ー衣?」

「そんなにジロジロ見ないで」

「何で?こんな可愛いプレゼントくれた未来の奥さんの顔を見せて下さい?」

 チュッチュッと頬にキスを受けながら麻衣は顔を上げた。

 真っ赤になった麻衣の顔に額をコツンと合わせた。

「ありがとね。すごい嬉しい」

「でも…子供っぽかった…恥ずかしい」

「そんな事ないよ!麻衣だから選べたプレゼントでしょ?」

 三種類のパジャマが二組。

 夏が終わり秋が来て冬を迎えてもずっと一緒に居られますようにと願いを込めた季節ごとのお揃いのパジャマ。

「これを着た麻衣を毎日抱きしめて眠るよ」

 陸は嬉しそうに囁いた。

end

―38―
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