『拍手小説』
ぱ5-8

「あぁ……予想通りグダグダな展開だったねぇ」

「メンバーに問題があったんじゃないのか?」

「そう? 貴俊なら冷静に進行すると思ったのに」

「だいたい、なんで俺がこんな所入らなくちゃならない。俺は今それどころじゃないんだ」

 六人が居た部屋の押し入れがスッと開いた。

 先に出て来たのはスーツ姿の和真。

 その後に続いて出て来た丸い肉の塊……もといブルーのセルフレームのメガネを掛けたジャージ姿のpaco。

「たまに私に付き合ってくれてもいいじゃない」

「俺は忙しい」

「何よ、ずっと出番なかったくせに」

「出番がなくてもやる事はやっている。もう戻っていいか?」

 狭い所に閉じ込められていた和真は肩を回しながらタバコに火を点ける。

 だがpacoは残った鍋にがっつくのに夢中で聞こえない。

「おい……」

「……やっぱり冬は鍋に限るよねぇ……んで締めは雑炊。 すいませぇーん、ご飯下っ……ぐはっ!」

「おい、人の話聞いてんのか?」

 鍋に手を伸ばすpacoの頭を足蹴にする和真。

 踵でグリグリと後頭部を踏みつけながら紫煙を吐き出す。

「き、聞いてます……ずびばぜんでじだ……」

「分かればいい。俺は戻る」

 ようやくpacoを解放した和真はネクタイを直しながら部屋を出て行こうとする。

「あぁ、一つ聞きたいんだけど」

「なんだ?」

 振り向いた和真。

「和真の萌ポイントは?」

 pacoの言葉に眉間に皺を寄せる和真。

 あぁ、やっぱり答えるわけがないよね、と再び鍋に向かうpaco。

「…………ドジっ子」

「またマニアックだなぁ……おい」

 箸を咥えたままpacoが振り返った時には和真の姿はすでになかった。

 和真と入れ替わるように入って来た着物姿のお姉さんが襖から顔を出す。

「失礼しまぁす! 雑炊のご飯お持ちしましたぁ」


end
―28―
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