『拍手小説』
ぱ5-3
「あ、あの……すみません。なんで私達が呼ばれたのかよく分からなくて……」
申し訳なさそうに謝る心愛。
だが四人が気になるのはムスッと無愛想な紅蓮。
「あ、あの……?」
「…………」
麻衣がニコッと笑いかけるがまったく反応を示さずに顔をそむける。
「なんだコイツ。挨拶ぐらいしろよ」
陸が声を掛けるが変化なし。
再び場に嫌な空気が流れる。
進行役しっかりして下さい。
「なぁ、もう食っていい?」
あぁ、いました。
空気読めてないけど場を和ませることが出来る人物。
どうやら空腹に耐え切れず視線は鍋に釘付けで右手で貴俊の袖を引っ張っている。
「いいよ。どれが食べたい?」
貴俊はデレッと目尻を下げて取り皿を持つ。
進行役なのは誰ですか?
「鶏肉! あと豆腐と……鶏団子も、その緑の葉っぱはいらねぇ!」
貴俊が箸を伸ばすと横から祐二が指示を出す。
もちろん祐二の好き嫌いなど本人よりも熟知している貴俊は春菊をきれいに除けて皿に取る。
最後に花型の人参を乗せると祐二は嬉しそうに笑う。
その数倍も嬉しそうな顔をしているのは貴俊。
そのイチャイチャ振りに思わず顔を見合わせる陸と麻衣。
「なぁー麻衣、俺も取ってよー」
子供みたいに口を尖らせる陸に麻衣は呆れながらため息をつく。
「あぁっ! なんでしいたけ入れんのっ! 俺嫌いだって知ってんじゃん」
「美味しいのよ。私に取って言ったのは陸でしょ?」
「んだよっ! 愛が足んない愛がっ」
嫌いな物を入れられて喚く陸に祐二は勝ち誇ったように笑いながら鶏肉を頬張る。
不貞腐れる陸に仕方なくしいたけを自分の皿に移す麻衣。
「心愛ちゃん、嫌いな物はある?」
麻衣に聞かれて心愛は首を横に振る。
そしてようやく場の雰囲気が和やかに食事が始まった。
―23―
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