『君の隣』
 季節『ある夏の一日'09』 P14 side貴俊


 祐二が突然口にした言葉には驚いた。

 最初はどういう意味で言っているのか分らなかったけれど、祐二の話を聞いているうちに色々悩んでるのは自分だけじゃないんだって分かった。

(嬉しい、すごく嬉しい……)

「ね……祐二、寝た?」

「寝た」

 起きているのを知っていて声を掛けると、恥ずかしがっている時のぶっきらぼうな声が返って来る。

 腕の中にいる祐二が愛おしくてたまらない。

 今日は海に一日いたしケガもしてしまったし、何もしないで腕枕だけで寝ようと思っていたけれど、こんな可愛い姿を見せられたらやっぱり我慢出来そうにない。

「祐二……」

 呼ぶ声が自然と甘さを帯びる。

 自分と同じシャンプーの香りのする髪に顔を近付けて、額に触れるだけのキスをすると祐二の身体がわずかに震えた。

 腕枕をしていた腕で祐二の体を引き寄せる。

「まだ……痛む?」

 無理はさせたくなくて、確認すると祐二は黙ったまま頷いた。

「すごく痛い?」

「そ、そこまでは……痛くねぇ、けど……」

 困惑気味の祐二の声に少しだけ迷う。

 今日は無理矢理するようなことだけはしたくない、ただもう少し祐二に触れたい祐二が自分の恋人だと感じたい。

 俺は空いている方の手を二人の身体の間にすべり込ませた。

「触るだけならいい?」

「触る、だけ? い、入れねぇ……の?」

「今日は入れない。祐二のこと……気持ち良くしてあげたい、ダメ?」

「……別に、い……いいんじゃねぇの」

 祐二らしい返事にキスを返して、ハーフパンツの中に手を入れる。

 すでに形を変え始めた祐二の分身に指先が触れると、小さく身じろいだ祐二の唇から短い吐息が漏れる。

 腕枕をしている手で柔らかい祐二の髪を梳きながら、下着の中の手を上下に動かすと祐二の手がシャツを掴み顔を胸元に伏せる。

「少し、濡れてきたね」

「う……うるさい」

「祐二のすごく熱い……それにもうこんなにカチカチだね」

「いっ、ちいち……説明すんなっ! 変態っ! 黙ってやれって」

 囁くような声で文句を言われても迫力もない、しかも文句を言う祐二の声が甘ったるいのは本人が自覚しているかどうか……。

「黙って扱くのもなんかアレだし……ねぇ、祐二?」

「なっ……んだよ」

「好きだよ」

 耳に唇を寄せて囁くと祐二の身体がビクンと震えた。

 手の中のものもそれに合わせるようにビクッと反応を示し、先端からはトロッとした雫を溢れさせる。

 指先で雫を絡め取り手の平で広げるように動かすと、静かな部屋のせいか淫らな濡れた音が耳に届いた。

「祐二……大好き」

 もう一度囁くとビクビクッと震え、祐二の唇から零れた熱い吐息が俺の首筋に落ちる。

「はぁ……っ、ん」

「可愛い……、可愛い、祐二。好きだよ……ねぇ、祐二も好き?」

 額やこめかみに何度もキスをしながら囁くと、俯いていた祐二がガバッと顔を上げた。

 快感からか濡れた瞳は暗闇の中でも光り、まるで睨み付けるように俺の顔を見る。

「分かりきったこと……いちいち、聞くっ……な! ばかっ」

「祐……二、嬉しい……っ」

 どんなに側にいたってやっぱり口にしてくれないと不安に襲われる。

 今日も一日色んなことで頭を悩ませたけれど、結局は祐二が言ってくれる言葉が俺を救い出してくれる。

「祐二、祐二、祐二……好きだよ」

「う、うるせぇっ……!!」

「ンッ……」

 何度も何度も好きと囁いたら、祐二はまるで衝突事故のようなキスをしてくれた。


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