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姫の王子様
断固阻止すべきか、それとも自分も同行すべきか……。
幸いクリスマスはバイト(家庭教師)の予定はない。
それならば選択肢は一つしかないと、拓朗は真面目な顔をして口を開いた。
「お兄ちゃんも一緒に行きます」
驚いた珠子の瞳が丸くなり、それから少しだけ困った顔をになった。
「三人で行くってこと?」
「そうです」
さも当然というように首を縦に振る拓朗に珠子は「うーん」と唸りながら首を傾げた。
「お兄ちゃんがどうしてもって言うならいいけど……」
「珠子ーーーっ!」
てっきり一刀両断で拒否されると思っていただけに、拓朗は瞳を潤ませて珠子に抱き着きそうになった。
「三人じゃ、乗り物の時困るね」
珠子の言っていることにピンと来ない拓朗が首を傾げていると、珠子は補足するように言葉を続けた。
「だってジェットコースターとかって普通二人で座るから、お兄ちゃん一人になっちゃうよ?」
言われて頭の中に映像が出る。
キャアキャア言いながら楽しむ二人の後ろに自分一人、周りは間違いなくカップルが溢れている。
それは……痛い、周りから向けられるであろう憐れみの視線がきっと痛すぎる。
「うう……いや……うーん」
一瞬心を揺らした拓朗だが、そんなことで引き下がってはキングオブシスコンの名折れ、拓朗はきっぱりと首を横に振った。
「大丈……」
「あ、もう一人誘えばいいんだ!」
言い掛けた拓朗は珠子の提案にそれもそうかと思ったが、すぐに自分には誘う相手がいないことに気が付いた。
普段は彼女の必要性を感じることはあまりないけれど、こういったイベント時にはさすがに寂しさを感じる。
正直彼女を欲しくないと言ったら嘘になる、だが彼女のが出来ても続かないのだから仕方がない。
彼女も大事だが、珠子のことはそれ以上に大事、それを理解してくれる相手がいれば何の問題もなかった。
普通に考えてそんな相手が簡単に見つかるわけがない、だからこうして彼女いない歴が更新され続けているのだ。
「そうだー、沙希誘ってみようかなぁ」
一人物思いに耽っていた拓朗は珠子の口から出た名前にドキッとする。
沙希は珠子の親友で、スラッと背が高く大人っぽく、面倒見も良くて拓朗も何度か面識があった。
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