姫の王子様

 今にも雪が降りそうなほど風は冷たいのに、寒さが気にならないのは、庸ちゃんが隣にいるかもしれない。

「うーマジで寒いな」

 庸ちゃんがダウンジャケットのジッパーを首下まで上げて体を震わせている。

「これ、貸してあげようか?」

 アトラクションをいくつか乗った後に、庸ちゃんが買ってくれたキャラクターの帽子。

 スッポリ被るタイプでモコモコしていて耳も付いていて、とってもあったかい。

「いらねーって。それより……ショーまでまだ時間あるし、どうする? 寒いし……どっか入るか?」

「んー……っと、あ……ちょっと待ってて!」

「おい、タマ!」

「庸ちゃんはここで待ってて」

 ついて来ようとする庸ちゃんを手で押し返して駆け出した。

 今日のデートもそうだけれど、いつでも庸ちゃんが何でもしてくれる。

 庸ちゃんは年が離れているからとか、社会人と学生だからとか、色々言うけれど私だって庸ちゃんに何かしてあげたい。

 クリスマスプレゼントだって、庸ちゃんが持っているようなブランド物はお小遣いでとても買えない。

 何をあげたら言いか分からないって言ったら、クリスマスを一日一緒に過ごしてくれたらいい、なんて言われた。

 すごく嬉しいけれど、そんなプレゼントでいいのかなって今日まで迷ってた。

 だから……こんなのがプレゼントになるわけじゃないけれど、たまには私が庸ちゃんに色々してあげなくちゃ。

 カートでお目当ての物を買って、ホッとするような温もりを手にして戻ると、ベンチに座っている庸ちゃんの横顔に足を止めてしまった。

 モデルさんだからなのかな……ただ座っているだけなのに絵になる。

 それに庸ちゃんだからかな……見ているだけでドキドキしちゃうよ。

「やっと戻って来たな」

 気が付いた庸ちゃんが立ち上がってしまい、少し残念だなと思いながら手に持っていたカップを手渡す。

「お、これ買いに行ってたのか?」

「うん! 飲んだらあったかくなるよ!」

「サンキュ」

 庸ちゃんは両手でカップを握り締めて笑ってくれた。

 私も自分のカップで両手を温めて、さっき庸ちゃんが座っていたベンチに座った。

 目の前を行き交う人達はほとんどがカップルばかり、いつもなら周りの視線が気になったりするのに、今日はなぜか見られている気がしない。

 やっぱり……あれかな、みんな自分の彼氏しか見えてないのかな。


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