意地悪な恋

 舞台の照明がパッと消えると、周りから歓声が上がり、まだよく分かっていない私は慌てて腰を下ろした。

「あ……」

 映し出される映像と流れてくる音楽とナレーション、そしてクリスマスを題材にしたショーが始まった。

「すごい……」

 話の内容は互いに想い合っている二人が想いを告げられず、クリスマスにプレゼントに想いを託し、そして奇跡が起こるという。

 クリスマスはとても不思議、どうしてこんなにも優しい気持ちになれるんだろう。

 好きな人と想いが通じ合い、こうやって同じ時間を過ごせること、それこそが素敵な奇跡。

 普段はそんなこと忘れていて、冷たい態度を取る和真に腹を立てることがあるけれど、もっと二人でいられる時間を大切にしたい。

 ショーのクライマックス、大きなクリスマスツリーが点灯されると、一段と大きな歓声が上がった。

「綺麗……。あ、写真……携帯で写真撮……」

 バッグの中から慌てて携帯を取り出そうとした私は肩が暖かい物に包まれて振り返った。

「和真?」

「お前は欲しい物が少ないから苦労する」

「これ……」

 肩に掛けられたのは淡いミンクグレーの大きなストール。

 首のラインにもフィットするようにカッティングされ身体をスッポリと包み込んでいる。

「メリークリスマス、かのこ」

「あ……あ、あ……私、何も用意してなくて、あっ、あの……用意してあるんだけど、今持ってなくて……」

 和真はいつでもこんな風に私を喜ばせてくれる、それに比べて私はプレゼントを選ぶセンスもないし、こんな素敵な演出だって思いつかない。

 申し訳なさに視線が下を向きそうになると和真の冷たい手が頬に添えられた。

「俺が欲しくて、お前があげられるものがあるだろう」

「え……なに?」

「分からないか?」

「私のあげられるもの? だって……お財布にそんなに入ってないし、あ……」

 どんなにお金が入っていたとしても、和真が普段身に着けている物を買うことは難しい。

 一体何が欲しいのかと考えたけれど、答えは和真の瞳の中にあった。

「もしかして……」

 自分の顔を指差すと和真はフッと笑って顔を近づけた。

「一晩かけてじっくり貰ってやるよ」

 低く囁いた声、唇が軽く触れた耳から身体がじわりと熱くなっていく。

 周りがクリスマスツリーに夢中になっているのに、私はすぐ側にある和真のことしか見えなくなっていた。

end

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