意地悪な恋

 喫煙所で寒空の下、煙草一本分の時間を待っていた私。

 それから近くにレストランに入って飲み物とデザートを食べた私。

 クリスマスに恋人と一緒に過ごしているのだから、これ以上の高望みはいけないと思いつつ、ここがテーマパークということが、もっと違う過ごし方があるのではないかと思わずにはいられない。

 こんなことならさ……ホテルにいた方が良かった、暖かいしテレビ見てゴロゴロしたり出来るし。

 会話も何となく弾まず、というか話す気分になれず、時間を持て余していた所へ、和真がようやく立ち上がった。

「そろそろ、時間だ」

 はいはい、分かりましたよーだ。

 心の中で「べー」と舌を出して和真の後をついて行く。

 すっかり暗くなった外は強く吹き付ける風がより一層冷たく感じた。

「さむ……っ」

 まさかこんな所に来るとは思わなかったから、普段と変わらない格好で特別な防寒もしていない。

 仕事へ行く時と変わらない薄手のコートでは寒空の下ではさすがに堪える。

 早足の和真を追いかけるおかげで、少ししたら寒さはそれほど気にならなくなったけれど、今度は行く先に見える人の波に驚いた。

「うわぁ……すごい人」

 一体どこからこんなに人が集まってきたのか、そう思わずにはいられない。

 和真は見向きもせず、目的の場所があるみたいに真っ直ぐ進んでいった。

「あ……これって、もしかして……CMでやってたクリスマスのショー!?」

 どうして今まで気が付かなかったのか、自分でもさすがに驚いたけれど、今はそんなことどうでも良かった。

「ね、和真……和真、もしかして……」

「いいから、早く来い」

 これを見せるために連れて来てくれたの?

 聞くまでもなくそうだと和真の後ろ姿がそう言ってくれている気がした。

「でも……こんなにすごい人じゃ、きっと見えないよ?」

 人波が何重にも重なり、ショーの舞台は遥か向こうに感じる。

 私の心配なんてお構いなしの和真が向かった先には、舞台の中央辺りに区切られたスペース、周りは人で埋め尽くされているのに、そこだけは人が2〜3人しかいない。

 一体どういうこと?

 不思議に思っている暇もなく、何かを見せた和真と私は当たり前のように中へと通される。

「すぐに始まるぞ。座れ」

 そう言って和真は紙袋の中から敷物を出して地面に敷いてくれた。


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