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『しつこくバレンタイン』←BLです

「ねぇ、祐二?」

「んー」

「聞いてもいい?」

「んー?」

「あの時さ」

「あの時?」

「今年のバレンタイン、あの時は自覚はなかったけど俺のこと好きだったってことだよね?」

 ポツリと呟くと隣でうつ伏せに寝ていた祐二が跳ね起きた。

 起き上がった瞬間、痛そうに顔を顰めたけれどそのまま怒った顔で俺を睨みつける。

 上半身はまだ裸でさっき付けばかりの愛した痕が所々に残っている。

「そ、そんなこと言ってねぇだろっ!」

「うん、聞いてない。だから聞いてもいい? って先に言ったでしょ」

「聞くなっ! そ、そんな昔の話は覚えてねぇっ!」

 祐二は激しく頭を振りながらまたベッドに突っ伏した。

 枕に顔を押し付けているけれど髪の間から覗く耳も丸見えのうなじも赤く染まっている。

「そっか、もしかしたら祐二は一人で帰るのが寂しかったのかなぁなんて思ったんだけど」

「バ、バッカ! 三十分も待たされて寒かったっつっただろ!」

 今度は顔だけ起こした祐二は叫んでからハッとした顔をする。

 不自然に目を泳がせてからぎこちなく顔を枕に沈めるとうなじから背中へと赤く染まった部分が広がっていく。

「祐二……」

「うるせぇっ!」

 さらに赤く染まった背中に唇を寄せるとビクッと体を震わせた祐二が枕の端をギュッと握り締める。

 可愛いなぁ、もう……。

 体を重ねると祐二のいつもより速い鼓動が肌を通して伝わってくる。

「俺が側に居ないなんてありえない……って今でも思ってくれてる?」

「し、知らねぇ……」

「俺は祐二の側にずっと居てもいいのかな?」

「…………」

「祐二?」

「聞こえてるっ! 耳元で騒ぐなっ!」

 囁く俺に向かって怒鳴り返す祐二。

 恥ずかしがり屋で照れ屋で、でも可愛い俺の恋人。

「――――ろ」

 真っ赤になって小さく小さく呟いた一言がどれほど俺を幸せにしてくれているのか祐二は気付いてるかな。

 ――そばに……いろ。

 もちろんだよ、今だって昔だって俺には祐二が必要なんだ。

「貴俊、下りろよ。おばさん……帰って来んだろ?」

「まだ、大丈夫だよ。だから、もう一回」

 目元を赤く染めた祐二が振り返って、困ったように目を伏せる。

 可愛い子猫に引っ掛かれるのを覚悟していたのに、耳にキスをすると俺の可愛い子猫は腕の中で甘えたように喉を鳴らす。

 唇を重ねながら祐二の手を握ると自然と握り返してくれた。

 あの日の予感は当たり祐二は俺の腕の中にいる。

 きっとこれからも、ずっとずっと……。

 閉め切った窓の外では夏の前の長雨が降り続いていた。

end


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