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『ホストと車のオマケ』

「新しい車すっごい楽しみ」

「陸も男の子だよねー」

 新車の契約を済ませた陸の目を輝かせて熱く語る姿はまるで少年のよう。

「後部座席ねフラットに出来るって!」

「じゃあ遠出した時とか仮眠取れるねー」

「あとカーテンもつけてー」

「カーテン?」

 バスとかにカーテンが付いてるのは見た事はあるけど普通の車にカーテンって必要あるのかな?

「そっ、カーテン運転席と後部座席の境目とサイドにね」

「なんで?」

「見られないようにだよ。スモークだけでも結構覗こうと思えば覗けちゃうから」

「覗く?」

 陸は顔に嫌な感じの微笑みを浮かべて私を見ている。この顔は大抵悪い事を企んでいる時で…。

「覗かれそう!なんて思うと麻衣の気が散りそうじゃん?」

「…何の気が散るのかな?」

 何となく言いたい事は分かるけどあえて聞いてみた。

「エッチ!さすがに俺も覗かれて興奮するタイプじゃないしねー」

 問題なのは覗くとか覗かれるじゃなくて車の中でエッチをするという事だと思うんだけど…。

「カーテンは必要ないです」

「えーっ!麻衣のエッチな顔を他の奴に見られるなんて嫌だかんねっ!」

 怒鳴りたい…殴りたい…
 ここが公共の場じゃなかったら今すぐにでも実行している所だけどここはグッと堪えて穏便に…。

「陸ー、車はそういう事する場所じゃないでしょ?」

 笑顔、笑顔で優しく言えば陸だって理解してくれる。

「当たり前じゃーん!」

 ほら、やっぱり陸だってちゃんと理解してくれるんだから。

「でもしたくなった時に近くにホテルがない時と困るでしょ?」

「いや、困らないし」

「うっそっ!もしかして麻衣って外でもオッケーだったの?」

 どうしよう…。バカに付ける薬はないっていうけど…。

「私は悲しいよ」

 思わず声に出た。

「俺も悲しい…。麻衣のカラダを満足させてあげられなかったんだ」

 陸はガクンと項垂れた。

 麻衣はため息を吐くとクルッと向きを変えて今来た道を戻り始めた。

「ちょ、ちょっと!麻衣ー?」

 陸が慌てて追いかけてくるけれど無視して早足で歩いた。

「ねっ、どうしたの?」

「車、断ってくる!そんな事に使う車ならいらない」

 って私が買うわけじゃないけどさ…。

「ごめん!ちょっと調子に乗りすぎた!ほんとごめんって!」

 陸は私の前に回りこむと手を合わせて必死に頭を下げているので仕方なく足を止めた。

「新車が嬉しくてはしゃぎすぎました。ごめんなさい」

 神妙な顔をして謝る陸を見たらそれ以上は怒る気になれないよ。嬉しくてはしゃぐ気持ちはよく分かるしね。

「分かったよ。それより早く帰ろ?」

 麻衣は笑顔で声を掛けると再び歩き始めた、その姿を陸がペロリと舌を出して笑っていた事は当然気付くはずがなかった。



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