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『熱帯夜』

「…っく、はぁっ…ちょ…たんまっ」

「んっ…陸?」

 麻衣の膝に手を当てて大きく開いた足の間に膝を付いていた陸が手を離して体を起こした。

 汗で濡れた髪をかき上げた。

 額に浮かんだ汗は頬を伝って雫となりピンク色に染まった麻衣の胸元を濡らしていた。

「暑っち〜! 汗が目に入ってイテぇ…」

「擦っちゃダメだよ」

 陸が手の甲で乱暴に目元を擦っていると麻衣は枕元にあったタオルに手を伸ばして陸の汗を拭った。

「んーっ…麻衣っ」

 陸は汗を拭っている麻衣の手を引っ張り背中に手を添えて抱き起こした。

 二人は向かい合わせになり互いの腰を抱いた。

 麻衣の肌もじっとりと汗で濡れシーツもぐっしょりと濡れていた。

「冷房強くしていい?」

「あっ…ん」

 陸は腰を抱いたままサイドテーブルのクーラーのリモコンに手を伸ばした。

 腰を捻じるような動きに麻衣が堪らず声を上げた。

「麻衣のエッチ。俺リモコン取っただけだってば」

「だってぇ…陸が…ぁん」

「俺が? じゃあこうするともっと可愛い声が聞ける?」

 陸は腰を揺すりながらクーラーの設定温度を20度まで下げた。

 大きく足を開き陸の腰を跨いでいる麻衣の体が揺れる。

「意地悪っ!」

 麻衣はギュッと陸の脇の肉を抓ってから首に腕を回した。

 陸も麻衣の体を受け止めるように背中にしっかりと腕を回して腰の動きを早くする。

 クーラーからは冷風が音を立てて吹き出し始めた。

 冷風が火照った二人の体を撫でていく。

 だがそれ以上に二人を包む空気も体内もまるで燃えているように熱く汗は一向に引く気配がない。

「アァッ!! 熱いっ! つーかまたマットが濡れるじゃんっ!!」

 麻衣の腰を乱暴に揺らしている陸が咆えた。

 先日も熱い交わり後にベッドが使えずにソファで眠るハメになった事はまだ記憶に新しい。

 陸は少ししょっぱい首すじにキスを繰り返していると顔を上げた。

「麻衣、掴まってて」

 甘い声を吐き出している麻衣に声を掛けると陸は体に力を入れた。

 体の向きを変えてベッドの端に移動すると床に足を着けた。


「り…く?」

「手離さないでね。ヨッと!」

 陸は声を掛けると勢いをつけて立ち上がった。

「きゃっ…あぁっん!!」

 体が浮き上がり二人の体がより深く繋がると麻衣が悲鳴を上げた。

 だが陸は気にせずにそのまま歩き始めた。

「やっ、やぁっ…だめぇっ!」

「もう! だからそんな可愛い声出しちゃだめだってっ…」

「う、動かないでぇっ」

「やだっ。リビング汗でベタベタにしたら麻衣怒るじゃん」

 陸が小柄な麻衣の体を抱えながら向かった先は風呂場。

 風呂場のドアを開けて浴槽に腰掛けた。

「ここならいくら汗かいても平気でしょ?」

「んん…」

 すっかり息の上がった麻衣は陸の肩に顔を埋めてぐったりしていた。

「麻ー衣?」

「陸のすごく熱ぃ…」

「は…ぁ…そうやってやらしい顔してエッチな事言うと…」

 陸は麻衣を下ろして後ろを向かせると腰を抱えた。

 体に力の入らない麻衣は腕で支えられず肩から落ちていた。

「嫌ってくらい汗かかせてあげる」

 陸は沸きあがる欲望を抑えきれずに舌なめずりをしながら狙いを定めた。

 二人を包む空気の温度がまた上がった。

 外は昼間の暑さが消え夏の終わりが近い事を知らせる涼しい風が吹いていた。

 けれどここだけは今夜も熱帯夜。

end



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