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陸の脳内劇場『バレンタイン後輩編』

「おい、陸ーまた女子が呼んでるぞー」

 休み時間になると教室の入り口近くに立っていた友達が声を掛けてきた。

 今日はバレンタイン。

 朝からずっとこんな調子で鞄の中はすでにチョコだらけになっている。

「中塚くん。コレ貰ってくれる?」

 違うクラスの女子が可愛くラッピングされた包みを差し出した。

「ありがと」

 笑顔で受取るとその子は嬉しそうに走って行ってしまった。

 で、これって義理?本命?

 陸は自分の席に戻るとチョコを鞄の中に放り込んだ。

「で、可愛い子居た?お前彼女居ないんだからよりどりみどりじゃん」

「はァ?別に告られてねーし」

 それにピンと来る子いねぇしさ…。

 放課後になっても校門を出るまでに何度も捕まりいい加減うんざりしながら帰り道を歩いた。

 学校の外に出るとさすがに誰にも捕まらず膨れ上がった鞄の心配をしなくてもよさそうだった。

 あーこんなに貰っても食えねぇのになぁ…。

 いっそ彼女でもいれば彼女いるから受取らないって手もあるんだけど。

「あ、あの…」

 歩いていると突然声を掛けられて足を止めた。

 制服は同じ学校だが見た事ない顔だった。

「何?」

 その子は恥ずかしそうに俯いたままモジモジとしている。

 今時その反応はなかなかいないよねぇ…。

「な、中塚先輩…あ、あの…これよかったら貰って下さい」

 俯きながら差し出したのはピンクのリボンで留めた小さな袋。

 受取る時に触れた手は氷のように冷たかった。

「ありがと」

 相手は俯いたままでも陸は笑顔でお礼を言った。

 陸は袋を手にしたまま歩こうとしたがその子はまだ俯いたまま動く気配がない。

「あ…私…中塚先輩が好きですッ」

 顔を上げて自分を見上げる瞳は涙で潤んで頬は赤く染まっている。

 やべぇ…どうしよ。

 陸はその子から視線を外せなくなってしまった。

「い、いきなり…変な事言ってすみませんでした!」

 その子は深々と頭を下げると体の向きを変えて駆け出した。

「ねぇッ!」

 陸が駆け出した後ろ姿に声を掛けると立ち止まり不安そうな顔で振り返った。

「もしかして…俺の事待っててくれたの?」

 陸は近付きながら問いかけると小さく頷いてくれた。

「学校で渡してくれればよかったのに」

「が、学校で声を掛ける勇気がで、出ませんでした…」

 顔が真っ赤になって鞄を持つ手に力が入っている。

「俺がここ通るって知ってたの?」

 あ…ちょっと意地悪な質問だったかな。

 目の前の女の子は泣き出しそうな顔になってしまった。

「ご、ごめんなさい…」

「どのくらい待ってたの?手…すごい冷たいね」

 陸は冷えきった手を取って温めるように握ると泣き出しそだった顔は真っ赤になって固まっている。

 やっべぇ…マジで可愛いんだけど。

「名前…聞いてもいい?」

「あ、あの…1-3のた、田口麻衣です…」

「麻衣ちゃん、明日からは下駄箱で待ってて?」

「えっ?」

 麻衣は言葉の意味が分からずに首を傾げている。

「外で待ってたら寒いでしょ?」 

 きょとんとした顔で見上げた麻衣の顔があまりにも可愛くて陸は思わずキスをした。
 
 麻衣は指の先まで真っ赤になった。

「な、中塚先…輩?」

「名前で呼んでほしいな?下の名前…分かる?」

 麻衣はコクンと頷いた。

「り、陸…先輩…」

「うん。よく出来ました。俺、彼女には名前で呼んで欲しいんだ」

 陸は麻衣の頭を撫でてあげると麻衣の瞳から涙が零れ落ちた。

  

 イイ!
 絶対イイ!

 麻衣が似合うのはやっぱりセーラー服だよな?

 “陸先輩”って一度でいいから呼ばせてみたいっ。

 今度コスプレさせてみようかなぁ…。



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