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『夏のお誘い』

 夏休みを間近に控えたある日。

「祐二!」

「どーした?」

 昼休みに教室にいた祐二の元へ佐藤太一が来た。

 太一は高校からの入学組で祐二と同じサッカー部で隣のクラスだった。

 万年補欠の祐二とは違って二年になってレギュラーになった。

「夏休みになったらプール行かねぇ?」

「はぁ!?いきなりなんだよ」

 祐二の机にバンッと手を付いた太一は突然そう切り出した。

 一緒に昼休みを過ごしていた祐二の恋人の貴俊は眉間に皺を寄せ友人の日和はキョトンと目を丸くした。

「夏って言ったらプールだろっ!」

「どうしたんだ、お前?」

 あまりの気迫に気後れしながらも返事をした。

 仲が良いっていっても二人でプールへ行くほど仲が良いわけでもなく祐二は戸惑った。

 それよりも右隣から感じる突き刺さる視線の方が気になって仕方が無い。

「プールって言ったら水着だろっ!水着と言えばビキニ!ビキニと言えば女子!」

「は、はぁ…」

 太一は周りが見えていない上にこの禍々しいオーラに気付かないらしい。

 祐二は右隣からの重苦しい威圧感に耐えながらこの場を何とかしないとと焦り始めていた。

「ピチピチのビキニの女子達と遊んでうまくやれば彼女もゲット!いい話だと思わねぇか?」

(全然思わねぇよ!)

 祐二は耐え切れずチラリと右隣を見た。

 不機嫌そうな顔の貴俊にジッと見つめられていて慌てて視線を逸らした。

 一瞬でもビキニの女子に心を動かされた事を絶対に気付かれたと祐二は冷や汗を掻いた。

 ここはすぐに断らないとマズイ事になると口を開きかけると日和が能天気な声を出した。

「プールぅ?面白そぉ〜!俺行きた〜い」

(ひーよりー!空気読めって!)

 さすがに声には出せず心の中でめーいっぱい叫んだ。

 だがそんな祐二の心の内も気にせず日和は言葉を続けた。

「祐も行こうよぉ〜!貴も〜一緒にー!」

 日和の言葉にハッとした祐二は力強く頷いた。

(そうだよ!一緒に行けばいーんだよ!)

 祐二も実は夏休みを前にして貴俊と遊びに行きたいと考えていたがどうしても男二人ではと色々と考えてしまっていたのだ。

 思いがけない誘いに目を輝かせて貴俊を見た。

「俺は祐二が行きたいって言うならいいよ?」

「だってー!祐〜ぅ?どーするぅ?」

「お、俺は…」

「ラッキー!篠田と菅生が来てくれるなら女子ももっと集まると思う!日にちは決まったら連絡するっ!」

 じゃあなーと太一は慌しく出て行った。

(俺…返事してねぇって…)

 行くと返事するつもりだったからいいが半ば強引に夏休み最初のイベントが決まった。

end


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