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『世界の中心はタマ』

 AM1:15『拓朗』called「庸介」

 以下、会話のみでお届けします。

『庸介、事件です』

「何その昔のドラマのノリ。明日早いから手短にしてくれよ」

『珠子が…珠子が…』

「タマがどうしたって?」

『プールに行くって』

「夏休みだぞ、プールくらい行くだろ」

『プールだぞ?水着だぞ?』

「そりゃプールに浴衣着て行く奴はいねーだろ」

『庸介…見損なったぞ。お前がそんなに薄情な奴だと思わなかった。お前なんか珠子の彼氏失格だっ!』

「日本人失格にされたくなかったら分かるように話をしてくれ」

『ビキニだぞ』

「………」

『白にピンクの水玉で首の後ろで結ばれたピンクのリボン。しかも…下も両横にピンクのリボン』

「………」

『あれは紐パンか?あんなのを着た珠子を悪魔の巣窟のプールに放り込めるのか!?いや…出来るわけない!夏のプールなんてナンパし放題だって事お前も知ってるだろ…っておい!庸介!ヨウ!聞いてんのか』

「珠子がビキニ?」

『そう言ってんだろ』

「白にピンクの水玉の紐パン?…お前なんでそんなに詳しく知ってんだよ。ってそんなの買わせるなよ!てめぇの目は何の為に付いてんだよ!」

『しょうがねぇだろっ!もう買って来た後だったんだ!』

「水着なんてスクール水着で十分だ!」

『庸介…よく考えてみろよ。スクール水着を着た珠子はある意味ビキニより凶悪だぞ?別の人種に囲まれて逆に危なかねぇか?』

「タク…プールに行かないように見張っとけ」

『それがな…もう遅いんだ』

「遅いって何が?」

『日曜に学校の友達と行くらしい』

「友達って沙希ちゃんとか?それなら心配ないだろ、沙希ちゃんはしっかりしてるし変な男に声掛けられても付いてく心配ないし」

『ハァーーッ!お前はどうしてそうなんだ。俺は学校の友達とって言っただろ。沙希ちゃんと行くならそう言うわ!』

「回りくどいんだよ!さっさと言えよ」

『グループデートだぞ』

「…お前の言い方なんかオヤジっぽいな」

『茶化すなよ!余裕こいてんのも今だけだぞ。そのメンバーにアイツもいるらしいぞ』

「アイツって…まさかアイツか?その情報は確かなんだろうな?」

『沙希ちゃんに電話して聞いたから間違いない』

「沙希ちゃんと電話するような仲だったのか?」

『珠子の友達だからな』

「……って普通は兄貴が直接友達に電話しねぇだろ」

『何か言ったか?』

「いや…何でもねぇよ。って本当に日曜なんだな?間違いねぇんだな?」

『間違いない』

「阻止…出来ねぇんだな?」

『あぁ、珠子がえらく楽しみにしてるからな』

「お前が送って行くのか?」

『いや…直通バスで行くらしい。お友達全員で』

「チッ…」

『それでお前…』

「何とか都合付けて連絡する。当然お前は…」

『予定は全部キャンセルして水着もバッチリだ!』

「…ってえらい楽しそうだな。まぁいいか…お前がシスコンで本当に助かったよ」

『まぁ俺一人でも大丈夫だから無理して都合付ける必要ないぞ』

「…お前の考えなんてお見通しなんだよ。五歳の時以来のタマのビキニだぞ。見逃してたまるか」

『やっぱりお前来なくていいよ。…五歳の珠子に欲情するような奴やっぱり彼氏失格だっ!』

「十歳のガキが五歳のガキに欲情するか!アホかお前…じゃあ仕事の都合付いたら連絡するからな」

『分かった。じゃあな』

「おぅ」

 プツッ…ツーツーツー…

end



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