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『お兄ちゃんご乱心!?』

「ただいまー」

「おかえり珠子。遅かったな?」

 リビングでテレビを見ていた兄の拓朗が声を掛けた。

「沙希と買い物行って来たのー!」

 珠子は冷蔵庫から麦茶を出すとリビングの扇風機の前を陣取った。

 汗で濡れた髪が扇風機の風で重たそうに持ち上がる。

「んー?何買って来たんだ?」

 拓朗は学校の鞄の横に置いてあったビニール袋に手を伸ばした。

 ガサガサと音がするのに気が付いた珠子は慌てて袋を取り返した。

「勝手に見ないでよぉっ!!」

 バッと袋を自分の後ろに隠す。

 拓朗はムッとした顔をして珠子ににじり寄った。

「お兄ちゃんに見せられないような物なのか?」

「もう!お兄ちゃんには関係ないの!」

 二人はソファを挟んで睨み合った。

 隠されるとますます気になるのが普通で拓朗はどうしてもその中身が気になって仕方がない。

「珠子!見せなさい」

「別に変なもんじゃないんだってばぁ!」

「変な物じゃないなら見せられるだろ?早く見せなさい!」

 まるで父親のような口調に珠子は頬を膨らませた。

「二人ともー何大きな声出してるのー?」

 騒いでいる二人の所へ母親の睦美がやって来た。

 睦美はすぐに珠子の持っている袋に気が付いた。

「いいのあった?」

「それがねぇ!沙希が似合うって言うからつい買っちゃったんだけどね…」

 珠子は睦美を手を引っ張って自分の部屋へ連れて行った。

 リビングに置いてきぼりになった拓朗はしばらくむくれていたが立ち上がると足音を立てずに二階へ上がった。

 珠子の部屋のドアにぴったりと耳を付けると中の会話が聞こえてきた。

「あら〜可愛いじゃない」

「でもビキニなんてーお腹とか気になるしー胸もないのにー」

「そぉ?ほら…パッド入ってるし寄せれば少しは…」

「ママー!?やぁだー!もぅ!」

 バタンッ!!

「ビキニだとぉーーー!」

「きゃぁぁっっ!お兄ちゃんのエッチぃっ!!」

 拓朗は我慢出来ずに部屋に飛び込んだ。

 部屋の中で水着姿だった珠子は慌てて体を隠して拓朗に枕を投げつけた。

 だが拓朗は怯む事無く水着姿の珠子を見た。

 白地にピンクの水玉に首の後ろで結ばれた紐とショーツのサイドのリボンがピンク色の可愛いビキニだった。

「そんなの着てどこへ行くつもりだぁっ!」

「どこってプールに決まってるでしょ!もう早く出てってよぉー!」

 珠子は上着を羽織りながら拓朗を部屋から追い出そうとする。

「庸介と行くのか!?」

「学校の友達だってばぁー」

「いつ!どこへ!誰とだ!ちゃんとお兄ちゃんに教えなさいっ!」

 珠子に押し出されながら部屋の入り口に何とか掴まっている拓朗が喚いた。

 母親の睦美は大きなため息を吐く。

「お兄ちゃん。シスコンもあんまりひどいと嫌われちゃうわよー?」

「母さん!母さんは心配じゃないのか?こんな格好でプールに行って変な男に声でも掛けられたらどーするんだ!」

「珠子には庸介くんがいるもの大丈夫よねぇ?」

「もちろんですっ!」

「そーいう問題じゃないっ!」

 ねぇーと顔を見合わせている珠子と睦美に拓朗は青筋を立てているが女二人はまったく聞く耳持たず。

「そうだ!庸介くんに写メしたらどぉ?」

「やぁだー恥ずかしいもん!」

 拓朗の存在を無視して二人で盛り上がる。

 バンッ!

 拓朗は壁を思いっきり叩いた。

 驚いた二人は怪訝な顔で拓朗を振り返った。

「お兄ちゃんも行くからなっ!」

 拓朗はビシッと人差し指を突き出して宣言するとドスドスと音を立てて自分の部屋へと入って行った。

end



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