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『女の聖域!?』

 日曜日、麻衣は陸と二人で買い物に来ていた。

「売り場どこ?」

「んー南館みたい」

 いつものように地下駐車場に車を止めた二人は手を繋いで近くのファッションビルへと入って行く。

 二人は迷わず目的の売り場へ向かった。

「うわっ…さすがにこれはすごいな」

 陸が思わず声を上ずらせた。

 見渡す限り水着、水着、水着。

 色とりどりの水着が目をチカチカさせた。

「ねぇ…やっぱり一人で選ぶからいいよ」

「やだっ!一緒に選ぶって言ったじゃん!」

 今年こそは絶対にプールに行くという陸と数時間に渡る議論をしたのは数日前のこと結局折れたのは麻衣の方だった。

 挙句は麻衣の水着を一緒に選ぶと言い出す始末。

(この光景を見たら怖気づくと思ったんだけどなぁ…)

 一面華やかなまるで女の楽園とも言うべき場所に臆することなく入って行く陸。

「…ねぇ…あの人かっこよくない?」

「見てみてー」

 ただでさえ目立つ陸は既に注目を浴びつつあった。

 本人はそんな事まったく気にしていない。

「やっぱビキニだよね?」

「えぇ…っとビキニは嫌かなぁ…なんて」

「とりあえずコレ試着してみたら?あとコレも!」

 陸は気に入った物を手に取って麻衣に持たせた。

 麻衣の意見など聞き入れるつもりはないらしい。

 渡されたのは紐で縛るタイプの黒ビキニとハイビスカスの柄も鮮やかなホルタータイプの水着。

「麻衣?早く着ておいでよ。それとも俺に手伝って欲しいの?」

「…あーもぅ…分かったから」

 もうこうなった陸を止める事は難しく麻衣は諦めて試着室へ向かった。

 麻衣は黒のビキニを最初に試着してみたが鏡の中の自分を見てすぐに脱ぐ決意をした。

 そしてハイビスカスの柄の水着を試着する。

「麻衣、来たー?」

 試着室の外に立っている陸が声を掛ける。

(恥ずかしいから呼ばないでよ!)

「き、着たよ…」

 麻衣が小さく声を掛けると陸は遠慮なく中を覗いた。

「おっ!可愛いじゃん。じゃあ次は黒いやつね」

「これはいい…似合わないから!」

 麻衣は黒いビキニを陸へ押し付けた。

「えぇ?着たなら見せてくれなくちゃ!もう一回着てよ!」

「絶対嫌ッ!」

 頑なに拒む麻衣に陸は渋々諦めると次の水着を手渡した。

 ギンガムチェックの可愛いホルタータイプ。色もシックなので麻衣は抵抗なく水着を受け取った。

 早速試着してみる。

 胸元のフリルと中央のリボンが可愛い。

 鏡に背を向けて後ろ姿もチェックする。

(今までの三着の中ではこれが一番可愛いかも)

 鏡に映る自分の姿をあらゆる角度からチェックしていると陸が突然顔を出した。

「きゃぁっ!」

「どう?」

「も、もうっ!!イキナリ覗かないでよっ!」

「恥ずかしがる事ないじゃん。それよりよく見せて?って…うわぁ…めちゃめちゃ可愛いーすっごい似合うよ」

 麻衣の姿を上から下まで舐めるように眺める。

「でもさーもっとエロくてもいいんじゃない?だからこっちと…これも…」

 陸は手に持っている水着を麻衣に見せた。

(エ、エロくても…!?)

 麻衣はプルプルと拳を握り締めた。

「もーー!!終わるまで外で待ってて!じゃないとプール一緒に行かないからっ!!」

 ついに怒りが頂点に達した麻衣が啖呵を切った。

「麻、麻衣?」

「今すぐここから離れて!分かった?じゃないと永遠にプールと海には行きませんっ!」

 真剣な顔で怒る麻衣にさすがに陸は大人しくその場を離れた。

 持って来た水着をちゃっかり麻衣に渡していくあたりは陸らしかった。

 一人になって麻衣は大きくため息を吐いた。

 落ち込んだ陸の顔がちらついて少し怒りすぎたかなとも思ったがさすがに「エロくても」の一言は気に入らない。

「だいたい彼女の水着姿とか他の男の人に見られても平気なわけ??」

 麻衣は独りごちながら陸が持ってきた水着に手を伸ばした。


end


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