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『モンスターオマケ』

「なぁなぁ、陸さん見てねぇ?」

「さぁ?」

 ったくどこ行ったんだ?

 麻衣さんの鞄も置きっぱなしで二人とも居なくなるなんて…。

「悠斗!陸さんならスタッフ用のトイレに麻衣さんといたぞ」

「は?麻衣さん?」

「あぁ、麻衣さんの介抱してた。さすがに今日は飲みすぎたんじゃね?」

 あー確かに…すごい酔ってたし。

 心配だしちょっと様子見に行ってくるか。


「紙ないですか?あ…それでいいです。あとマジックも」

「響、何やってんの?」

「んーちょっとね」

 フロントにいた響が紙とマジックを持って何かしていたが気にせずトイレに向かった。

 トイレのドアに手を伸ばす。

 待てよ…先にタクシー呼んでおいた方がいいかもな。

 トイレの前でUターンするとちょうど向こうから響が歩いてきた手にはさっきの紙を持っている。

 俺の前で立ち止まるとジッと顔を見た。

「トイレ…入った?」

「いや?」

「ならいい」

「…って…何だよ」

 響は俺の横を通り過ぎるとスタッフ用のトイレの前に立った。

 持っていた紙をドアに貼っている。

「何…コレ」

 俺は後ろから覗き込んだ。

【立入禁止】

「…ふり仮名書こうか?」

「バカにすんな!これくらい読める!って中に陸さんいるんだろ?」

 ドアに手を掛けると響が上から押さえつけた。

「入らない方がいい」

「はぁ?だから何で!」

「耳」

「はぁ?」

「ドアに耳付けて聞いてみたら」

 響の言ってる事は意味が分からなかったがドアに耳を押し当ててみた。

『ガタッガタッ…』

 軋むような音が聞こえる。

「……これって」

 響の顔を見ると黙って頷いている。

 俺はもう一度耳を押し当てた。

『………ッ、ハッ…』

「なーにやってんのお前ら」

 通りかかるほかの奴にもジェスチャーで伝える。

 小さなドアに何人もが耳を押し当てる。

『アァッ……』

 甲高い声が聞こえると小さなどよめきが起きた。

「おい、何やってんだ。飯奢って欲しいやつはさっさと行けっつただろ!」

 誠がトイレのドアの前に立つホスト達の尻を叩いて追い立てる。

 誠はチラッとトイレを見てチッと舌打ちすると壁にメモを張り付けてみんなの後を追いかけた。

「チクショー…盛ってんじゃねぇぞ」

end


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