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『仏の顔も…オ・マ・ケ』
「終わった〜倒せたね!」
「麻衣も最後まで頑張ったよね。で…終わると経験値が入ってレベルが上がって獲った武器が表示される。もっと色んなキャラもいるから気にいるのを見つけるといいよ」
陸と麻衣はゲームが終わったところだ。
「でもすごい指が痛いよ」
麻衣は右手の親指をさすっている。
「すぐに慣れるよ。この先どんどん敵も多くなって強くなってくんだよ」
「えぇー!今でも大変だったのに!」
「初めてだったからだって。でも俺がちゃんとフォローすれば出来るでしょ?」
「うん…ふふっ」
麻衣は陸の体にもたれて甘えている。
陸も麻衣を抱きしめながら顔を寄せて唇で時々頬に触れた。
「麻衣ーお腹空いたー」
「そうだねー私もお腹空いたから何か食べようか」
麻衣はお腹をさすりながら立ち上がった。
「キャァァッ!!」
「どうしたっ!?」
麻衣の叫び声に陸が慌てて振り返る。
麻衣の視線の先…というより二人の後方でうずくまる一人の男。
「ゆ、悠斗くん…」
「悠斗…」
二人は顔を見合わせた。
悠斗がゆっくりと顔を上げた。
恨めしそうな視線で二人の顔を交互に眺める。
「仲直りしたんすね。良かったっすよ。ほんと良かったっす…」
その声には力がない。
麻衣は慌ててそばへ寄る。
「悠斗くん…ごめんね。あの…忘れてたとかじゃなくて…」
「別にいいんすよ。お二人が仲が良ければそれで俺は満足ですよ。たとえ二人が俺の存在を無視していちゃつきながらゲームを30分以上やってたとしても…二人が仲が良いのが一番っす」
悠斗は完全にいじけていた。
床の上に“の”の字でも書いていそうな雰囲気。
「べ、別に無視したとかじゃないって…」
陸もさすがにマズイと思ったのか立ち上がってフォローに入る。
けれど悠斗は膝を抱えてしまっている。
陸は麻衣に助けを求める視線を送った。
「ゆ、悠斗くん…お腹空いたでしょ?何か作るけど…何食べたい?」
「別に…俺…コレでいいっすよ」
そう言って持ったのはさっきのカップ麺。
「まだ持ってたんだ」
陸は思わず吹き出してしまった。
悠斗はキッと陸を睨みつけた。
「悪かったって!ちょっとゲームに夢中になってたからで別に悠斗の事忘れてたわけじゃねぇから」
陸は両手を胸の前で合わせて頭を下げた。
「もう…いいっすよ。その代わり…」
「その代わり?」
「俺も麻衣さんとゲームやらして下さいよー」
ニヤリと悠斗が笑う。
陸の表情が一気にムッとした表情へと変わる。
「嫌だね!」
「もう!陸ってば…ゲームくらいいいじゃない。私すっごい下手だけどいいの?」
「全然構わないっすよ!」
悠斗は笑顔で立ち上がるとテレビの前へと座った。
「麻衣さんも!」
悠斗が自分の前をポンポンと叩きながら麻衣を呼ぶ。
むくれた顔の陸が麻衣を引き止めるが麻衣は陸を宥めると悠斗の横に座る。
「麻衣さん…ここ。ココに座って!」
さっきの陸と同じことがしたいらしく足を広げて待っている。
さすがに麻衣は躊躇して陸を振り返った。
「変なことしませんって!やばくなったらすぐに助けてあげられるようにです!」
「麻衣、座ってやれよ」
「い、いいの?」
珍しく陸がOKを出したので麻衣は悠斗から少し体を離して腰を下ろしてコントローラーを握る。
「設定とか分かります?」
悠斗が麻衣のコントローラーに触れようと手を伸ばした。
「よいしょっと!」
陸が悠斗と麻衣の間に腰を下ろした。
「これを押して…んでほら使いたいキャラ選んで?さっき使ってたのは…」
「りーくーさん!」
「何だよ」
「何だよ…じゃないっすよ!何すかコレ!」
テレビに向かって麻衣、陸、悠斗の順に座っている。
しかも無理矢理割り込んだ陸のせいでギュウギュウ詰めで悠斗の体はぴったり陸の背中に寄り添っている。
「何って…ちゃんと麻衣はお前の前に座ってんだろ?」
「えぇ座ってますね!正確には俺の前の前ですけどね!」
「細かいこと気にすんな。ほら、さっさと選べよ!」
「あーもぅ!くっそぉ!」
悠斗は何を思ったのか手を伸ばして麻衣の体の前でコントローラーを握った。
3人の体がさらに圧縮される。
「ばっか!てめっ…何してんだよ!」
「何ですか?早く始めますよ!」
悠斗は手元は見えていないが感覚でボタンを押した。
「ちょっとぉ…陸重いーー」
陸は麻衣の肩の上に顎を乗っけている。
コントローラーは麻衣が握り陸の腕はしっかりと麻衣の腰を抱いていた。
「文句は俺じゃなくて悠斗に言えって…つーか悠斗!息が耳に掛かって気持ち悪ぃ!息すんなよ!」
「はぁ!?俺を殺す気ですか!」
「あははっ…」
二人のやりとりに麻衣が声を立てて笑う。
「麻衣も笑うなっ!ってマジで離れろ!」
「嫌です!」
「キャァッ!陸、陸!敵がいっぱい出て来た!」
麻衣の声に一瞬にして二人は画面に集中する。
結局ゲームが終わるまでの間ずっとその体勢でいた三人でした。
end
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