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『冬はおコタで』

 いつも突然で唐突でおまけに説明もない陸の行動には振り回されっぱなし。
 今日も訳が分からぬまま車に乗せられた麻衣は近所のホームセンターに来ていた。

「陸、どういう事?」

「コタツ買おうっ!」

「なんでコタツ?」

「冬はやっぱりコタツにみかん!」

 確かにその通りだけどいまさらコタツって。

「でも陸の部屋じゃコタツ置くのは変だよ?和室もないんだし」

 あんなお洒落なリビングにコタツはさすがに合わないでしょ。

「和室があるトコに引っ越すか…」

「はいーーッ!?」

 陸のとんでもない発言に麻衣は大きな声を出して周りから視線を感じて俯く。

「他に理由があるんでしょ。何考えてるの?」

 麻衣は声を潜めながら陸に詰め寄ると悪びれた様子もなくニヤッと笑った。

「麻衣と一緒にコタツでみかんが食べたいなぁって思っただけだよ」

「りーく?ほんとに?」
 
 麻衣が疑いの眼差しを陸に向けると今度はバツの悪そうな顔をして視線を逸らした。

「麻衣、怒るもん」

 急に可愛い顔になった陸に思わず理由も聞かずに許してしまいそうになるのをグッと堪える。

「聞かなきゃ分からないでしょ?」

「怒らないって約束してよ?」

 麻衣はその質問には答えずに陸に話すように促した。

「後ろから抱っこしてイチャイチャしたいなぁって」

「…それだけ?」

 聞くまでもないとは思うけど陸の事だからそれだけで済むはずがない。

「うぅ…狭いコタツでエッチしたら燃えそうかなぁって…」

「……」

 呆れて言葉も出ないとはこのこと。

「ねっ?麻ー衣ちゃん、買うでしょ?」

「いーらーなーい」

「なぁーんで!」

 なんでって…わざわざコタツでする意味分からないしそれに…。

「コタツじゃないと燃えないんだ?」

 ボソッと呟いた麻衣の言葉に陸は意気揚々と手を引いて歩き出した。

「ちょっと…急にどうしたの?」

「ベッドでも十分燃えるって事証明しなくっちゃ!」

「そういう意味じゃないってば〜!」

 陸が立ち止まって振り返る。

「場所じゃなくて大事なのは二人の愛!ね?」

「そ、そうだね…」

 コタツ購入は阻止できた。

 こうして今日も麻衣の“陸”操縦レベルは1上がった…?



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