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『朝のヒトコマ[麻衣]』

麻衣です。

 今…29歳忘れてるかもしれませんけど小さな鉄工所の事務員やってます。

 人生何があるか分からないとはよく言ったもので私には8歳年下の彼氏がいます。

 しかもホスト。

 出会った時のチワワのような愛くるしさに惹かれて真っ直ぐな彼の想いに心を奪われてそして彼の奥さんになる予定。

 セクシーボイスでクールな感じのホストだったのに最近は少し小悪魔やんちゃ系、でも素顔の彼は優しくて真っ直ぐで可愛くて…

 それに甘えんぼでわがままで自己中でヤキモチ妬きでえっち、だけどあばたもえくぼでそんな所も大好きです。

 でもこの頃陸の行動は目に余るものが…


 AM7:40
 仕事へ行く支度を済ませて玄関に向うとさっきまでベッドで寝ていた陸が座り込んでいた。

「陸どうしたの?」

「麻衣忘れ物!」

 寝起きはいい方なのに声を荒げて膨れながら私を見上げた。

 忘れ物?慌ててバッグの中を確認する…携帯あるし、財布もあるし、定期も…

「全部入ってるけど?」

 ブスッとした顔をして靴を抱え込んだ。

「陸?ふざけてないで靴返して、遅刻しちゃうよ」

 靴を取り返そうとした手を引っ張られてバランスを崩すとそのまま陸の腕の中に倒れこんだしまった。

「大事な物忘れてる!いつも忘れないじゃん!」

 分かるまで離さないって顔をしているけど分からなくて、両手を挙げて降参した。

「あーもぅ!信じられないっ!」

 分からない私に更に腹を立てたのか上目遣いで睨んでいる。

「おはようのキスしてないじゃん」

 え?たったそれだけ?と驚く私の唇を強引に奪うと気が済むまで離してくれなかった。


 あばたはあばたかも…そんな二人の朝のヒトコマ。




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