「明日は休み、だろうな」

 全員をタクシーに乗せて見送り、誠は彰光が運転する車の後部座席でポツリと呟いた。

「んー? まこっちゃーん、何か言ったー?」

 運転席の彰光にルームミラー越しに視線を送られ、窓の外の流れる景色を眺めていた誠は、視線を戻すと座席に身体を預けて口元に笑みを浮かべた。

「いや、何でもないですよ」
「お膳立てしすぎだったねー。ベロンベロンだったじゃん」

 ちゃっかり聞こえていたらしい彰光のクスリと笑う声、二人がかりでベッドに運んだグッタリしていた陸の姿を思い出すと、どうしても笑いが堪えきれない。

「あの調子じゃ使い物にならないですね」
「あれでナンバーワンっていうんだから、ほんと信じられないよなー」
「アイツはアレがいいんですよ。仕事が終われば100%気持ちをリセット出来る。本人の中に葛藤はあるけど仕事は仕事と割り切ってっているし、プライベートを守るために危険な橋は渡らなくなった」
「そうだなー。初めのスレてた頃を思えば、今の方がよりホストらしいかもなー」

 容姿は良いのにとにかく可愛げのない子供、ずっとそう思ってきたのにいつの間にか、ほんの少しだけ大人の表情を見せるようになった。

「巣立つ日も遠くないかもな」
「ん?」
「いえ。着いたら起こして下さい」
「りょーーかーーい」

 今度は聞こえていなかったらしい彰光には誤魔化して、心地良くアルコールの回った体をドアの方へと傾けて目を閉じた。

end

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