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 ご褒美はあなたの笑顔をください



サボが原因不明の熱を出してから三日、いつものようにドアをノックして「入るよー」と返事も聞かずに開け放つ。
すると、熱で苦しそうなサボの姿ではなく、布団を頭まで被ったサボが「入るな!」と叫んだ。
突然のことにビクッと一瞬動きを止めたものの、そのまま勢い良くサボに近づいた。

「どうしたのサボ!大丈夫!?」
「大丈夫だから出てけ!頼むから!!」
「顔くらい見せなさいよ!何なの、なんか発症したの!?」
「発症……してない!」
「そんなわかりやすい嘘があるかっての!!」

布団が今にも破けそうになりながらも、私も必死だった。
どうしよう、本当はとんでもない病気だったら。
ここで治せなかったらどうしたら。
必死すぎて、ほんの一瞬病人だというのは頭から追い出したのだ。
鳩尾目掛けて拳を落とし、「うぐっ!?」と唸るサボから強引に布団を引き剥がした。
そしてーー
見えたものに、二、三度パチパチと瞬きをして、苦しみに歪むサボに尋ねる。

「………これは…?」
「し、るか……」

ピクピクと動くそれを、思わず指先で摘むと温かった。
茶色くて三角の形をしたそれは、

「…犬耳、に、見えますね…」
「…お前、ありえねえ…」

顔までもう一度ずり上げた布団を、今度は強引に引き剥がせなかった。

どうやら先日サボが行った場所では、悪魔の実に関する人体実験がされていたらしく、その研究所を破壊した際に変な粉を嗅いだという。
そこからの発熱、そしてこの犬耳が生えたという現象。

「元に戻れんのかしら…」
「……おい、いつまで触ってんだ」
「だって」

にやけそうになる口元を必死に抑えながら、寝転がったままされるがままのサボを見下ろす。
犬耳はふわふわでぬくぬくで、時折ピクピクと動く。
面白くなさそうに不貞腐れたサボが、不満気に私を見つめるこの全てが、なんだかもう。

「可愛いいいー!!」
「このやろう……」

青筋を浮かべるサボに構わず抱きつくと、病み上がりとは思えない力強さで引き剥がそうとしてくる。
それに負けじと腕の力を強めながら、再度サボを見る。
ふわふわの金髪から覗く茶色の耳、怒りながらも少しだけ頬が赤くて、この姿を写真に収めたいと切に思う。

「何でそんな不満気なの、むしろ皆に報告したくてたまんない」
「そんなことしてみろ、もう容赦しないからな」
「サボお手!」

ゴッと本気のゲンコツが落ちた。
その痛みで悶えていれば、上半身を起こしたサボが膝の上らへんで悶える私に呆れたような溜息を零した。

「…おれじゃなくてお前に生えてたら、ペットにすんのにな」
「…へ?」

自分で殴ったくせに、私の抑える場所を撫でながらサボが言う。
余程私が呆けた顔をしていたのか、それにぷっと吹き出して、数日ぶりの笑顔を見せた。


【ご褒美はあなたの笑顔をください】


それから数分後、呆気なく犬耳は消え去り本当に残念でした。


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