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「#幼馴染」のBL小説を読む
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あなたはなくてはならない人。
私にとっても、…皆にとっても。

「じゃあ体育祭は皆、これでいいな!?」
「「「おーう!!!」」」

黒板には体育祭の種目と、それに出るクラスメートの名前が記されている。
委員長として前に立つ彼は、他の友達と楽しみで仕方ないというような、いつもより子供っぽい無邪気な笑顔で早くも優勝クラスを兄弟と賭けてることを暴露した。
もちろん当然、それぞれがそれぞれのクラスに賭けたそうだが。

「おいラブ!」
「、はい?」
「この競技はあいつらも出るっつってたから、よろしくな!」

笑顔のあなたに、私は頷くことしか出来ない。
いつもいつも、私は離れたところから見るだけでも苦しいのに。
あなたはいつも近づいてきては、私に甘くてほろ苦い感情を残す。
心拍を上げて、息が苦しくなって。
でもまた何故か欲しくなる、まるで危険な薬のようだと思う。
それなのに、よりによって体育祭では二人三脚のペアになった。
足が一つに結ばれて、硬い体が近くにあって。
力強い腕が回されたら、もう私の目が回る。

「行くぞ」
「う、ん」

足を踏み出せば、気持ちいいぐらいにスムーズに進む体。
一度も止まることなく、競技の距離を走り終えて、彼はパッと笑顔でこっちを見た。

「これは、いけるぞ!ラブ!」

ずっと強く早く鳴り続ける鼓動は、走ったからか笑顔のせいか。
でも気づけば私も笑っていた。
胸が苦しくなるほど、楽しくて。
楽しい時間ほど、早く過ぎて行って。

気づけば、体育祭本番。
私達はクラスの期待と声援を大いに背負って、足を結ぶ。
練習では一度もこけなかった。
だけどここには猛者達が集っている。

「サボー!負けないからなー!」
「勝つのはおれ達だ!な、マルコ」
「エースにも負けねえ!」

わいわいと騒がしい場所に向かって、サボが声を張り上げる。

「お前らに見せてやるよ、息が合うってどういうことか」

そう言って不敵に笑うサボに、私が一番ドキドキした。
だけど、確かに。
負けたくない。
もう、これだけ近づくことはないだろうから。

「サボ、絶対勝とうね」

そう言って笑いかければ、サボはニカッと笑った。

「ああ、もちろん!勝ったら言いてェこともあるんだ」
「?そうなんだ」
「ああ、だから」

スタート位置について、お互いに腕を回す。
強敵達がいる中で見せつけよう。
目が合えば、同時に笑い返した。

パンッ!

走り出すと、周りもやっぱり速かった。
特にルフィ君やエース君も速い。
まずい、でも、焦るな。
サボが私だけに聞こえるように囁く。

「ラブの本気で行け。大丈夫」

少しずつ、少しずつ速くなる。
だけど何も乱れない。
まるで一人で駆け抜けて行くように。
驚くほどぴったりと、サボが私の隣にいる。
呼吸も鼓動も、まるで全てが一つになったかのように。
ゴールテープを切った先で、横にはけて崩れ落ちる。
私達のチームの歓声と、一緒に息を切らしてるサボが、私の腕を引く。

「最高だな」
「本当に」
「あれだけ息があっても、やっぱ言葉にしなきゃ伝わらないよな」
「?どういう…」

すぐ後に来たエース君とルフィ君の丸くなった目、他の生徒や先生だとか、ちらほらと見守ってる保護者もいるのに。
引いた腕を更に引っ張って、重なった唇に思考回路は止まった。

「好きなんだ、ラブのことがずっと」

息をしなければ、生きてはいけない。
それと同じぐらい、彼は…私にとって無くてはならない人。




【息】
1 口・鼻から空気を吸ったり吐いたりすること。また、吸う空気や吐く空気。
2 二人以上で何かをする場合の、相互の気持ちのかねあい。調子。呼吸。





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