ただひたすら、真っ暗な絶叫マシンだったとナマエは考える
目を閉じていたので、どうなっていたのかは分からないけれど、時折中ぶらりんになる足元に今まで出したことのない力でGにしがみついた事は確かだ
安定したので、やっと着いたかと安心したところにかけられた「飛び込むから離れるな」の声と浮遊感
今現在は濡れ鼠である
「あ、ありがとう、ございます」
「……いや」
それでも、礼を言わないのは間違っているとナマエは頭を下げてから辺りを見回す
テンプレートな南国だな、とぼんやり思った
照りつける日差しから逃れようと木陰に近付くと、そこには同じ事を思っていたのかマーカーがいた
「なんだ、出て来たのか」
「あそこにいても、どうしようもありませんしね」
Gは、ナマエを解放した場所から動いていない
ハーレムとロッドが出てきていないので、その場で待つつもりなのだ
マーカーはそちらに目線だけをやり、直ぐにナマエに視線を戻した
「どうするつもりだ?」
「何も考えてませんよ……まあ、とりあえず服をなんとかしたいですね、このままじゃあ塩で大変な事になりますし」
「ならば好きにするがいい、先に言った通り危険は無いはずだからな」
そうして、マーカーは視線を飛空挺に移す
彼もまた隊長を待っているのだ
ナマエは、その隊長にもロッドにもいい印象が無いため、会う前に散策を開始しようと、取り敢えず木々の間に目を凝らす
「あぁ、定期的に戻ってきた方が良いかもしれんぞ」
「え?」
「置いていかれたくは無いだろう?」
目を細めるマーカーは、酷く楽しそうな顔をしていた
顔を引きつらせたナマエは、何度か頷いて森の中へと足を踏み出す
鬱蒼とした森の中は、日差しが無いために随分と涼しかった
濡れた体には堪える、そう思ったからでは無いだろうが、くしゃみが出る
早めに体と服を何とかしなくてはと足を進めていると右側からガサガサという音が聞こえて、思わず立ち止まった
危険は無いと言っていたが、マーカーの主観となると話は別だと、そこでやっと気付く
こんなジャングルに動物がいない訳が無いじゃないかと、ガサガサ鳴り続ける茂みを見つめ続ける
戦う術を持たないナマエは、逃げた方が良いと思いながらも、体が言う事を聞かなかった
どの位かの後、逃げる事が出来ないナマエの前に、音の正体が姿を現した
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