全員参加の酒盛りが一段落したころ、マーカーは1人離れた机に座るナマエへと目を向けた
ナマエが座っているのは事務的な作業のためと置かれていた机なのだが、特戦部隊のメンバーが使うわけも無く、埃とゴミの置場になっていた物だ
そもそも特戦部隊がするべき事務作業は、マーカーとGが気が向いた時にやる、という本部泣かせの事態に陥っていたので、仕事自体が溜まっていた
「なにか、事務仕事とか無いですか」
強制的に自己紹介をさせられた挙げ句、お前も飲めと巻き込まれたナマエが、缶ビール片手に言った言葉をマーカーは思い出す
怪訝な顔をしながらも、溜まりに溜まった仕事を押しつけると、礼を言ったナマエは机からゴミを退けて書類とにらめっこを始めたのだ
どうせガンマ団に戻るかどうか分からないのだし、そう考えて放置していたものの、ずっとそこで何をしているのかくらいは把握するべきかとマーカーは重い腰を上げた
「……どうかしました?」
不機嫌そうに、チビチビとビールをのんでいたナマエが手を動かしたまま言うので、マーカーは書き込みが終わったらしい書類を見る
何ヵ月分か分からないそれが、数時間で出来るとは思えない量が積み重なっていたので期待していなかったが、それは良い結果で打ち砕かれる事になる
「……貴様がやったのか」
「私とマーカーさん以外はあっちにいるじゃないですか」
言いながらもナマエは電卓を叩いている
目を通した書類は全て完璧に仕上がっていた
「こういう仕事してるので、得意なんですよ」
そうして、また新しい書類をマーカーの前に置く
それもきっちり仕上がっていたため、マーカーのナマエへの評価が少しだけ上がった
本人の性質上、それを口に出したりはしないのだが
ナマエは作業の合間にビールを飲んでいるが、頬がほんのり染まっている以外は酔っているようには見えない
「それに、綺麗にまとまると嬉しいんです」
そうして、へらりと微笑むナマエ
酔っていないようで、やはり酔っているらしいとマーカーは溜め息をつく
まあ、そんな顔をしたところで何とかしようとする輩は
「なになにナマエちゃんカッワイイ顔しちゃってー!」
1人、居た
ロッドを自身の技で反射的に燃やしたマーカーは振り返って睨み付ける
「暇なら自動操縦に問題が無いか見てこい」
叫びながらも部屋から出たロッドが、言った通りにしたのだろうと判断したマーカーは再びナマエに目を向ける
積みあがっていた未完成の書類は、全て完成たらしい
伸びをしてビールを煽ったナマエを見ていると、首を傾げてきたので目を逸らす
「仕事は出来るようだな」
随分とぶっきらぼうな言葉ではあったが、ナマエはそれを聞いて笑った
「誉めてくれてます?」
「…………フン」
沈黙は肯定、頭の中が随分とふわふわしているナマエはそう捉えて机に突っ伏す
そのまま数分もしないうちに聞こえたのは寝息で、マーカーはまた深く溜め息をつくのだった
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