「ちょっ、ハーレムさん、離して苦しい!」
「アハハナマエちゃん敬語どっか行ってるよ」

我関せずなハーレムと面白がっているロッドに引きずられて、ナマエは外へと連れ出された

「おや、これはお隣さん」

言ったのはハーレムだ
無視しやがって、とナマエは心の中だけで呟く

「今から挨拶に伺おうかと思っていたんですよ」

にこやかに挨拶するのは、浅葱色の羽織りを着た中年男性
その周りには他にも3人が立っていて、獅子舞ハウスの隣には平屋の家が建っていた
ご飯を届けに来た際にそれを目にしていたナマエは、てっきり特戦舞台が新たに部屋を広げたのだと思っていたが違ったらしい

「これ、引っ越しそばです」
「これはこれはご丁寧に」

ハーレムから聞きなれない言葉が出たと思うと同時に、ナマエは地面に尻餅をついていた

「痛い!」
「うわあヒクわー……」

ナマエを抱えていたハーレムが蕎麦を受け取るために手を離したからなのだが、引くなどと言いながらロッドは手を貸す素振りを見せなかった
実際は浅葱色の羽織の連中に警戒していたからなのだが、それを知らないナマエの中でのロッドの株は急降下である

「大丈夫か?」

じっとりとロッドを睨んでいたナマエの目の前に、大きな手が差し出される

「あ、ありがとうございます」

手を取り立ち上がると、新たな住人の中で一番背の高い相手が目の前にいた事にナマエは驚く

「ワシはウマ子じゃ、女同士仲良くしてもらえると嬉しいのう」

豪快に笑ったウマ子に一瞬動きを止める
新たな住人の中で一番大きくて一番筋肉がついている相手が女と言うことに驚きはしたが、直ぐに気を取り直してナマエは頭を下げた

「ナマエです、よろしくお願いしますねウマ子さん」

頭を上げると、ウマ子は腕を組んで何事かを考えていた
口に出すのは流石に失礼にあたる気がすると我慢したが、組んだ腕がまた筋骨隆々で、ナマエは目が離せなくなってしまう

「ナマエさんは成人しとるんか?」
「え、はい、してますよ」

そんな時に話し掛けられて、慌てて返事をした
何を思っての質問かと首を傾げていると

「ワシは女子高生じゃ、さんなんていらん!」

再び豪快に笑ったウマ子は、更に爆弾を落とした

「……そ、そうなんだ……じゃ、じゃあ、よろしくね、ウマ子ちゃん」
「おう、よろしくの!」

ナマエは、なんとか作った笑顔で握手をする
そんな中、視界の端にうつるロッドが顔を背けて震えている事に気付いたので、後でなにかしらの復讐をしてやろうと心に決めたのだった

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