「周瑜さまあ!!」

目を覚ました私が第一に聞いたのは、妻の声だった
体を起こせば、そこは私の私室で
思わず額に手を当てて考え込んでしまう
――私は、名前殿は、どうしたのか

「小喬、私は一体……」
「周瑜様はね、お仕事中に倒れちゃったんだよ」

小喬が言うには、私は何日かろくに寝ずに仕事をして、倒れてしまったらしい
通りで何をしていたかが曖昧なはずだ
そして、倒れてから大した時間も立っていないと
やはり名前殿は、私の夢であったのか

「でも、ちょっとしか寝てないのに周瑜様随分顔色がよくなったね」

嬉しそうに私の頬へ手を添える小喬に考える
倒れるのは、今回ばかりではない
何度か倒れては、小喬や孫策に叱られていたが……同じように倒れたなら、今回だけ顔色が良いのはおかしいのではないか

「……どうかしたの、周瑜様」
「いや…………なんでもないさ、心配をかけてすまない」

頭を撫でると直ぐに笑みを浮かべる小喬に、最後の夜にした話を思い出す
私は帰りたかった、名前殿にそれを告げた訳ではないけれど……帰れたのなら、いいのではないか
何が気に食わないかと言えば、礼を言えなかった事だろうか

しかし言えなかったのは仕方ない、悔やんでもどうにも出来ないことだ
もしも彼女とまた会うことが出来たなら、その時に伝えればいい
何かの拍子に名前殿が此方に来たならば、結婚相手を紹介するのも礼にちょうど良いのかもしれない

「周瑜様、どうしたの?」
「いや、おかしな夢を見ていたようでね」
「えーなになに教えてよー!」

きっと困った顔をする名前殿を思い
有り得ない事と分かりながら、そんな日が来ればいいと笑った


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