周瑜さんが来てから三日間、私は連続で仕事だった
その間にテレビで情報収集をしたり、しっかりご飯を食べたり、睡眠を取ったり、そんな生活をした彼は随分回復したようだ
そして三日目の夜、事件は起きる……と言うと、大袈裟なのだけど

明日は休みだからと、お酒を飲みながら二人で夜更かしをしようかと話をしていた所に、私の電話が鳴る

「もしもし名前?」

私が何かを言う前にそう切り出すのは、母さんしかいない
どうせ私が何も言わなくても話すんだろうと次の言葉を待つ

「来ちゃった!」
「は?」
「今ね、マンションの前に居るのよ!」
「ちょっ、まっ、えっ?」
「待ってるから下に迎えに来て頂戴な」
「まっ……切れた」

通常運転過ぎる母さんに、頭が痛くなる
泊まるなら事前に話せというか……いや、今はそれどころではない

「名前殿、どうしたのだ?」
「……母親が、下にいるらしいです」

それを聞いた周瑜さんが止まる
その間にも私は、言い訳を考える
娘の結婚を今か今かと待っている母さんが周瑜さんを見たら大変な事になるだろう
私は自室に行き、周瑜さん用の着替えとシンプルなシルバーリングを持って戻る

「すいません、これに着替えて、それから手を出して貰えますか」

言われた通りに手を出した周瑜さんの左手薬指にリングを通す
幸いな事にピッタリだった

「周瑜さんは今日私の家でする飲み会に来ていた友人、という事で話を通します」
「承知した」
「この指輪は結婚しているという証ですから、母さんに私との仲を勘ぐられたら出して下さい」

リビングの角に畳んであった布団を急いで自室に入れ、周瑜さんにも入ってもらう

「五分後位には戻りますから、着替えて座っていてください」
「ああ、気を付けて」

頷いて、私はマンションを出る
駆け足で階段を掛け降りて、マンション前まで行くと本当に母さんがいた
大きなため息をついてしまったけれど、私は悪くないと思う

「名前、久し振りねぇ!」

にこにこと駆け寄る母さんに、思い切りチョップをかましたくなったけれど堪える

「あのね母さん、今日家で飲み会をする予定なのよ」

一応、帰れという言葉を使わずに言ってみるけれど

「大丈夫、母さん気にしないわ」

それで帰るなら、そもそも周瑜さんにカモフラージュをお願いしていない

「少し休んだら駅前のホテルに送るから、そっちに泊まってね」
「えぇー」
「布団をクリーニングに出してるの、来るって言わない母さんが悪いでしょ」

言いながら時計を見る、そろそろ五分たつ
周瑜さんは大丈夫かな、少しだけ不安はあったけれど

「じゃあ行こう」

私は、部屋に戻る事にした


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