山になっていた唐揚げは、殆ど陸遜さんのお腹におさまった
食べ過ぎたと思ったのか、食後の彼はどこか恥ずかしそうで可愛いかった
食器を片付けて、お風呂に入り、寝る前に明日と家の事の説明をしようと再びテーブルの前だ

「つまり、私は此処から出ずに留守居をすれば良いんですよね」
「そうです」

賈クさん程に吹っ切った様子ではないけれど、一応了承してくれるから良かった
ちょくちょく何かを考えながら暗めな顔をするのが少し気になるけど、話してくれるのを待つべきだろう
説明が終わって、そんな事をぼんやり考えていたら唐突に決心した顔を向けられて驚いた

「名前殿」
「なんですか?」
「その、本当にすいません」

しかも、急な謝罪
困惑するしかなくて、それが陸遜さんにも伝わったんだと思う

「だって名前殿は、突然現れた私を、嫌な顔をせずにこうして世話を焼いてくれている」

はっきりと説明してくれると、納得できた
多分だけど、陸遜さんは無償でこうして世話を焼くなんていうのが信用出来ないんだろう
賈クさんの様に完全に懐に飛び込んで自分のペースに巻き込むとか、そこまで出来なかったのかと

「ああ、いいんですよ、困った時はお互い様じゃないですか」
「しかし性別もそうですが、違う事が多過ぎる、名前殿の負担になります」
「私が面倒を見るのが好きでやってるんです、これなら納得してくださいますか?」

だから、なにかしらの理由をつけたいのかもしれない
打算があると、私に何かの旨味があると思いたいとか、そういう事なんだろう
陸遜の生い立ちを考えれば、そういう事も分からないでもない
自らの一族の仇の兄弟がおさめる呉にいるために、旨味を取るために、彼は自分を殺しているんだろうか
だから、私にもそれを強要している……無意識のようだけど

「さっきも説明しましたけど、この国で戦が起こる事はまずありません」
「しかし」
「貴方の、陸遜さんがいる世界とは違うんですよ……力を抜いて、大丈夫です」
「……っ!」

図星だったらしい
口を引き結んで、多分手を強く握ったんだろう、肩に力が入っている
私は立ち上がって冷蔵庫からビールを持って戻る
陸遜さんと私の前に一本ずつ置いて、自分の分をあけた

「飲みませんか、お酒です」
「私は」
「酔った場の話にしましょうよ、私が陸遜さんの面倒を見るって決めたのも、ね?」
「……すいません」

俯いて、ぽつりと一言だけ言った陸遜さん
彼の目の前に置いた缶ビールをあけて置き直すと、ぽろりと涙がこぼれるのが見えてしまった
ティッシュを何枚か彼の前に出して置いて、おつまみを取りに再びキッチンへ
さきいかを持って戻ると、説明しなかったけどちゃんと顔を拭ってくれたらしかった

「さ、乾杯しましょう」
「…………はい」

陸遜さんは、此方の世界に来てから、やっと笑ってくれた


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