今日は本の発売日
勤め先で買っても良かったんだけど、ゲーセン行ったりとか他の買い物もしてしまおうと複合施設、というかショッピングモールのような場所にやってきた
無駄に広いそこは1日いられるというレベルで色々な店舗が入っている
電器店のゲーム売場も見ておこうかと思って、そこに向かっている時に事件は起きた

「おっと、ごめんよ大丈夫だったか?」

背の高いお兄さんにぶつかられて、彼の顔を見上げて止まる
李典さんじゃないですかヤダー

「……本当に大丈夫か?もしかして当たりドコロ悪かったり」
「しないです、大丈夫です」

思考がとまっていたのを無理矢理に動かして返事
首にスタッフ、李典と書かれた紙を下げているあたり、何かのイベントスタッフなんだろう

「よかった、ところでつかぬことを聞くけど今何時かね?」
「えーと……12時25分ですね」
「ぅえっ!?」

腕時計で確認したら、その腕を掴まれる
そして自分で確認したらしい李典さんはやっべーな、と呟いた

「あのさ、スタッフがこんな事聞くのはどうかと思うんだけど」
「はあ」

彼は自分の目の前で思い切り手を合わせた
その行動にちょっと驚いて後退る、彼は目を閉じてるから分かっていないけど

「電器店の場所教えてくれないか!」
「は、はい、良いですけど」

電器店でなんのイベントだろうと思いながらも、私は彼に場所を教える
私の言葉を反復しながら、李典さんは一度聞いて覚えたらしい

「オッケー覚えた、わかりやすい説明ありがとうな」
「いえいえ」
「じゃあすまないが俺急ぐから!」
「私の事はお気になさらず」

手を上げて、教えた方へ向かおうとしていた李典さんは最後にもう一度私の方を振り返ってウインクをしてきた
何事だと思った私の目は見開いてるはずだ

「アンタとはまた会う予感がするぜ!」
「は」

何か返事をする前に李典さんは走り去る
深く考えない事にして、私は私でゲーム売場へ向かう事にする

そして、李典さんの予感は的中した

電器店のゲーム売場で先行体験イベントをやっていて、そのスタッフだったようだ
ゲーム売場に足を踏み入れた所、すぐに見つかり手を振られた
隣にいるのは楽進だし、何という二人一組

「ほら、また会っただろ?」
「李典さん、ナンパが原因で遅れそうだったんですか」
「違う違う、迷ったから彼女にここの場所教えてもらったんだって!」

楽進さんは、眉を下げて李典さんに向けた視線を私に移したので、とりあえず頷いて同意しておいた
すると、楽進さんが身体ごと向き直って頭を下げたので驚いてしまう

「ありがとうございました、彼がいなければ自分が1人で進めなくてはいけないところだったのです!」
「いやいやたいしたことしてませんから頭を上げてください!」

あわあわとしていると、それが面白かったのか李典さんがケラケラと笑っていた
元はと言えば貴方が迷ったから、そういう視線を向けると感付いたらしい
ふいっとわざとらしく視線をそらされてしまった

「ここにおいでということはゲームがお好きなんですか?」
「はい、普通の人よりはやってると思います」
「ではよろしければ体験していかれませんか?」
「えっと、なんのゲームでしょう」
「アクションRPGです、今回はアクションパートのみですが」

そうして渡されたパンフレットの会社名に危うく吹くところだった
SOGI、その下には曹魏とかいてあったんだもの
まんまじゃねーか!言わなかった私を誉めてほしい

「まだ整理券配ってる段階だからさ、良ければやってってよ」

へらりと笑った李典さんと楽進さんを交互に見て、私は首を縦に振る

「じゃあ整理券、と名前聞いてもいい?」
「名字……って、名前必要なんですか?」
「いや、これは単純にナンパ」
「李典さん……」

困り顔の楽進さんと、呆れ顔の私に見られても彼はめげないらしい

「とりあえず名字だけでいいや、また今度会ったら名前教えてね名字ちゃん」

とりあえず、私に言えるのは1つだけだ

「仕事してください」

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