「名前、回覧板持っていってくれない?」
休みで里帰りした相手に対して、人使いが荒いのではないかと思ったけど、母さんは昔からこうだった
渋々了承して、行き先を聞いたら関さんの家だとかで
「イケメン兄弟を見てきて詳細を教えて頂戴!」
なんて、凄まじい指令まで出される
断る!と言いながら回覧板を引っ掴み、私は家を飛び出した
呼び鈴を鳴らして暫く待つ、はーいと言う返事と共に開けてくれたのは関索くんだった
「こんにちは、回覧板持ってきました」
「わざわざありがとうございます……あ、名前さん、今時間ありますか?」
軽く首を傾げて、直ぐに私は頷く
「じゃあ、是非上がって行って下さい」
「え?」
頷いたのは私だけれど、そうなるとは思っていなかった
断る間もなく、あっという間に私は関家へと上がっていた
「銀屏、名前さんだよ」
お茶の間の扉を開けながら関索くんが言うと、本を読んでいた女の子が顔を上げる
彼女は私を見つけると、周囲に花が咲くんではないかと言う程の笑顔を見せてくれた
「ちいにいさん連れてきてくれたの!?」
「いや、回覧板を持ってきてくれたんだ、それより自己紹介は?」
はっとした銀屏ちゃんは、勢い良く立ち上がると私の前まで来て頭を下げた
「関銀屏です、昨日名前さんの事を関索兄さんに聞いてから会ってみたいと思っていたんです!」
「名字名前です、けどちょっと大袈裟ですよ」
「そんな事ないです、仲良くしてくれると嬉しいです!」
頭を上げると、直ぐに私の手を握ってくれる銀屏ちゃん
ただ、気のせいでなければ私の手からミシミシ音がするのだけれど、少々痛いのだけれど
「銀屏、力を抜かないと」
「えっ、あっ、ごめんなさいっ!」
やっぱり銀屏は銀屏らしい
大丈夫だよ、とは言うものの、まだ少し握られた手が痛い
その後、約束(銀屏ちゃん曰くデート)があるらしい関索くんは直ぐに出かけてしまって、私は銀屏ちゃんと2人きり
高校生だという銀屏ちゃんの話を聞いたり、私の仕事や住んでる場所の話をしたりで、初対面のはずなのに随分盛り上がった
「普段はこっちにいないけど、帰って来た時は相手をしてくれると嬉しいな」
敬語もいらないと言われたから、そうする事にした
「勿論です、遊びにも行っちゃいますよ!」
「あはは、是非来てよ!」
可愛い妹分と思えばいいのか、まだまだ仲良しには遠いかもしれないけど
一方的に見知った相手の中では初めての女の子だし、仲良くなれたら良いと思った
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