今日は休日
でも、やっぱり私は大使館にいた
こっちの方が居心地がいい……なんて言ったら、流石に義父さんに悪いけれど
でも血の繋がった父さんが死んでから、小さかった私は兄さんに連れられて毎日の様に大使館に来ていたから
そう思うのも仕方無いと言い聞かせてみる
「名前、そろそろお昼だよ!」
「もうそんな時間だったのね……じゃない、どうして此処にいるの兄さん」
私は、アレバストで一室を使い宿題をしていた
前もこんなことあったなぁと、溜め息がでる
「今日は僕と昼食だよ」
「いや、だからどうして」
一つの事に夢中になっている兄さんは、人の話を聞かない
公の場で、この癖を出さないだけまだ良いんだけど
「良い店を見つけてね、名前と来れたら良いなぁと思っていたんだよ、そこはボルシチが美味しくてさ、大きなピアノも」
「兄さん、短く」
そして、夢中になっている兄さんは話が長い
これは気を置けない相手と、っていう付加がつくから良いんだけど
もっぱら、私とマニィが酷い目に合う
「名前とご飯が食べたくて」
「……うん、分かったわ」
そして、折れるのも私たちだ
私が聞きたかった理由は、そういう事じゃないのに
「じゃあ行きましょう、そのボルシチのお店?」
「うん、そうだね、行こうか」
それでも、まぁ一緒にご飯を食べたいと言われて悪い気はしない
兄さんも嬉しそうに笑ってるし
「随分前から、カーネイジ大使に言ってたんだよ」
「え?」
私の手を握ってぶんぶん振り始めた兄さんは、唐突に話始める
「休みの日に娘さんを貸してください、って、カーネイジ大使は渋々だったけどオーケーしてくれたんだ」
それは、私が聞きたかった事
兄さんが此処にいる理由と……義父さんが一緒にご飯を食べないなんて、と思っていたから
ただ単に兄さんの根回しというか、義父さんが根負けしたのね
「カーネイジ大使の娘だけど、僕の大事な妹だしさ、一緒に居たいんだよ」
笑って、兄さんは言う
我が兄ながら、無駄に顔は良いからちょっと照れる
でも、同級生の男子は微妙って言ってたな……欲目なんだろうか
「……ありがと」
それ以上、何か言えなくて私は強く手を握る
兄さんも嬉しそうに握り返してくれた
もう、欲目でもなんでも良いや
彼は私の大事な兄さんだもの
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