義父さんは、優しかった
私の実力を評価して褒めてくれる、それが私には何より嬉しい
今までは、手放しに褒める兄さんがいたから自分がちゃんと出来てるのか正直言って不安だった

「私は妻がいないから、名前に迷惑をかけるかと思っていたのだがね」
「そんな事無いわ、義父さんには凄く感謝してるのよ」

色々と手を回してくれたらしく、私は大使館内を自由に歩き回れた
それは、いつでも兄さんに会いに行けると言う事
……実際は、マニィに請われて会いに行くのだけど
使い物にならない呼ばわりされる実の兄と言うのは、どうにも悲しい

「今日はダミアン大使に会わなくても良いのかい?」
「流石に毎日会っていられないわ」

それでも、学校から直接家に帰らずに大使館に寄ってしまうのは
……癖、という事にしておきたい

「今日は義父さんと一緒にいるの」
「……有難いね」

がさがさと音をたてて、学校帰りにコンビニから買ってきたものを取り出す
義父さんは、その音に顔を上げた

「はい」
「アイスかい?」

目の前まで行くと、義父さんがトケイソウの観察日記を書いていた
……仕事じゃないのか

「買ってきたの、一緒に食べましょ?」
「アイスくらい言ってくれれば、もっと良いものを用意するのだがね……」

義父さんは、どうにも不服そうだ
年に反して、完璧主義というか……上物でないといけないという考え方をしているから当然だけれど

「良いの、私からのプレゼント……嫌なら、勿論食べなくても」
「食べない訳がないだろう?」

義父さんは、背筋を伸ばして膝をぽんぽんと叩いた
此方に来いと、言っている様だ

「座りなさい、父に学校での事を教えておくれ」
「はい」

私は、大人しくそれに従う

兄さんの前の大使は、血の繋がった父さん
あまり、構ってくれない人だった
だからこその、過保護な兄なのだけど

義父さんは、仕事の合間に構ってくれるし話もしてくれる
養子だから、気を使ってくれているのかもしれないけれど

「成績は相変わらず良い様だな……名前は、私の誇るべき娘だよ」

私の事を、ちゃんと娘と言ってくれる
だから、彼は私のとうさんだ

「……こうして食べると、安いアイスも美味しい物だな」
「そうでしょう?
……だから」

また、一緒に食べようね

私がそう告げると、義父さんは笑顔で頷き
頭を撫でてくれた
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