「なに、してんの?」

いつもの車が学校の前に止まっていて
ああ、またマニィが迎えに来てくれたんだと近付いたら
運転席には兄さんがいた

とりあえず、周りを見渡してみる
カメラとか笑いを堪えたマニィとか、見当たらない
というか私にドッキリを仕掛ける意味なんか無いか

「名前、おかえり」
「ただいま……じゃなくて、何してんの?」

助手席に回って、素早く乗り込む
私がシートベルトをしたのを確認すると、兄さんは車を出した

「聞きたい事、沢山あると思ってね」

兄さんは昨日の食事の時よりも、スッキリした顔をしていた
私が聞きたい事に、全て答える
それが、兄さんの出した答えなんだろう
兄にこういうのもなんだけど、真っ直ぐな人だと思う

「結論から言うと、名前と僕は全く血が繋がっていないよ」

兄さんが言うには、私は再婚相手の連れ子だったらしい
私の母が、再婚して直ぐに病気で亡くなってしまって、父さんは子供の相手が上手い人では無かった
だから面倒を見ていたのはベビーシッターと兄さん

「正直に言うと……最初の頃は僕も微妙だったよ、血が繋がってないと分かってからは尚更ね」

兄さんも、最初から知っていた訳では無いようだった
再婚相手の、半分血が繋がっているからこそ面倒を見ていた

「でも、そういう考え方はどうかと思ったんだよ」

兄さんに目を向けると、此方を見て笑っていた

「……前、見て運転してよ」
「ふふふ、ごめんごめん」

さっきから、大使館に行く道を走っていない
遠回りと言うより、最早ドライブだ

「名前と僕は家族なんだから、一緒にいるのは当たり前なんだよ……これが、僕の気持ちさ」

思わず、顔を背けた
分かっていた、兄さんがそう言ってくれると信じていた
でも、やっぱりどこか心配だったんだと思う
兄さんの言葉に、泣きそうだった

「……義父さんに養子に行った時に、断ち切っちゃっても良かったんじゃないの」
「そうするには、僕は名前が好き過ぎたからね」

私の悪態も突っぱねて、笑いながら言ってるのが声で分かる

「とりあえず、僕が説明できるのはこの位かな」

やっと車は大使館の方に向かって走りだした
私を連れていくのは決定事項らしい

「ん、ありがとう」
「お礼はおかしいんじゃないかなあ、僕は隠してたんだし」
「私の為、でしょ?」

窓の外に目を向けたまま、ぶっきらぼうになってしまった声

「そう……だけど、やっぱり自己満足なんだよ」
「気にしてないったら」
「うん、ありがとう」

でも、私が怒ったり不貞腐れてる訳では無いと、兄さんはわかっている

「そっちこそ、ありがとうは変じゃないの」
「ええ、そうかなあ?」

私達は、これで通常運行だ
なんとなくホッとして、兄さんに目線を移す
兄さんも笑っていて、それで私はちゃんと安心できた

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