晩御飯を一緒に食べよう
兄さんと義父さんを、そう言って呼び出した
マニィに頼んで、静かな個室のレストランは予約済み

「私が兄さんと血が繋がってないっていうのは、本当?」

メインが運ばれてから、私は本題をぶつけた

兄さんも義父さんも、手が止まっている
まあ、それはそうだ
知ってると思ってないだろうし、面と向かって聞くとも思ってないだろうし
私は、メインの牛ステーキを口に入れる
こってりしたのを食べたかったんだけど、思ったよりあっさりしていた

「名前、なんで」
「……いつ知ったんだい?」

驚いた義父さんは珍しくて笑ってしまう
そんな私の反応に、二人はまた驚いてしまっているんだけど

「昨日よ、たまたま二人が話してるのを聞いたの」

二人とも苦虫を噛み潰したような顔
私が気にしてない様な態度だから、尚更どう言うか計りかねてるのかもしれない

「本当なのよね、二人が嘘でそんな事言うはず無いもの」
「名前……」
「あ、別に癇癪起こしたりしないわ、本当の事を教えてほしいだけ」

困った顔の兄さんに、私も苦笑で返す
そして義父さんに顔を向けると、ゆっくり目を開いた所で、ばっちり目が合った

「本当だよ」

義父さんの言葉で、兄さんも腹を括ったのかもしれない

「……そうだね、僕と名前は血が繋がっていないよ」

溜め息をつきながら、そう答えてくれた
私は、それと同時に最後の肉を口に入れる
兄さんと義父さんの皿の肉は、全然減っていなかった

「二人とも、とりあえず食べてしまったほうが良いと思うけど」

私の言葉に二人は、やっぱり困った様な顔をする
そんな気分じゃない
っていうのは、確かなんだろうけど

「二人がそんな顔をするのは心外だわ、今回の件で一番傷付いたのは私だと思うんだけど」

飲んでいなかった紅茶に手を伸ばす
当然のように冷めてしまっていたから、控えていた居たたまれない雰囲気の店員さんに新しいものを頼んだ

「とりあえず事実だけ確認出来たから、今日はそれでいいわ」

冷めた紅茶を一気に飲み干す
苦くなっていて、顔をしかめてしまう
そんな私の様子さえ、神妙に見る二人がおかしかった

「ところで、私ってば今日お財布が空っぽなの」
「……は?」

唐突な私の言葉に、二人は目を丸くした

「このお店が安くは無いって、二人なら知ってると思うんだけど」
「私たちに、食事代を出せと言うことかな?」

義父さんは話が早いから助かる
まだ目をぱちくりさせている兄さんをほっといて、笑って話を続ける

「そういう事、いいでしょう?」
「やれやれ、仕方ないね」

してやられた、そんな顔で笑う義父さんも初めて見た
なんだか今日は得ばかりしている気がする

「では今日は私が払おう、そしてまた近いうちに三人で食事に来ようか……その時は、ダミアンくんにお願いするよ」
「いや、しかし」
「名前がそれで良いと言っているのだから、私たちには何を言う事も出来ないはずだよ?」

義父さんの言葉に、兄さんは言葉を詰まらせる
流石は義父さんだ

「次の食事も楽しみにしてるわ、美味しい所じゃなきゃ嫌よ?」

私は、今回の件で少しわがままになったかもしれない
そうでもしなきゃ、二人はずっとお通夜の様な顔をしていた気がするけど

「……わかったよ、適わないなあ」

そう言って、やっと兄さんは笑う
まだ困った様にだったけど、やっぱり兄さんは笑っていないと変だと思った

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