泣いて、泣いて泣いて
まだまだ泣きたりては無かったけれど、顔を上げた時にバックミラーにちらりとマニィが見えたから
なんとか、無理やり泣き止んだ
何も考えなければ、とりあえず涙は止まる
私が顔を上げたのを見計らったのか、マニィが車に向かって歩いてきた
優しい人だな、と考えたらまた泣きそうになったので、その考えさえ放り投げる
マニィは私に近い扉を開くと、タオルを差し出してきた
触ってみるとひんやりした、濡れタオルのようだ
「温かいものと交互にあてると、目の腫れが目立たなくなるそうです……温かいものが用意出来なかったので、とりあえずの応急処置ですが」
普段通りに笑いかけてくれるマニィにホッとした
うつむいて、タオルを受け取って、小さい声で礼を言う
思ったよりも声がかすれて、聞こえたかとマニィを見ると笑顔のまま頷いてくれた
聞こえたらしい、よかった
「では、家までお送りしますね」
目にタオルをあてると、運転席の扉が閉まったようだった
そのまま私の返事を待たずに出発する
前から思っていたけれど、マニィは少し強引なところがあると思う
「大使達には適当な説明をしておきました、聞いてしまった事は言っていません」
運転しながら、マニィが口を開く
「聞けると思った時に、名前さんからお二人に聞いてください」
ゆっくりと、優しい口調で
「私から申し上げられるのはそこまで、知りたくなければ聞かないと言うことも出来ます……貴方が知らないふりをすれば、ですが」
でも、厳しい言い方
苦しいけど、ありがたい
「…………聞くよ、いつになるかはわからないけど」
「ゆっくりでいいんですよ、時間はまだまだあるでしょう」
タオルをずらして、ミラー越しにマニィを見ると、嬉しそうに笑っていた
「大使館に行きたくなければ、理由をでっちあげるのを手伝いますから」
「……うん、まあ別に必ず行くとも言ってないから……そこはなんとでも」
笑顔も言葉も、何もかもが優しくて、また泣きそうになったから
私はタオルを目に押しあてた
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