「え、血が繋がってないのか?」

驚いた声を上げたのは榊くん
知っていたスズナ以外は、凄い顔をしている
兄さんを好きだと公言している香澄さんはわかるけど、なせ赤木くんまで青くなってるんだろう

「厳密に言えば半分ね、父親が一緒なの……私は再婚相手の子供って事」
「アレバストの大使がダミアンさんのお父さんなの?」

香澄さんが聞いてくる
元は兄さんの事を聞きたいと言っていたのだけれど、いつのまにか私の生い立ちをかいつまんで話す事になっていた
課題なんかで組む事が多いから、必然的にどんどん仲良くなった五人組
大使館に行ってからは、席も近いからか話す事が多くなっている

「違うよ、私は養子にいったから」
「じゃあカーネイジ大使は、義理の父親なのか」

香澄さんへの答えに返してきた赤木くんに、私は頷いた

「すげー絡み合ってるな……訳分かんなくなってきた」
「あたしも……」

榊くんと香澄さんは頭を抱え始める
赤木くんも、口元に手を当てて動かない……考え込んでるんだろう

「家族がどうでも、名前ちゃんは名前ちゃんだよ」

そんな彼らをしり目に、スズナがゆっくりと言う
驚いたのは、私だ

「スズナ……」
「誰がお父さんでも変わらないよ、私は名前ちゃん好きだもん」

いつもの笑顔で言ってのけるスズナに、私は何も言えない
照れるけど、なにより嬉しい

「それはそうだ」
「俺たちの友達は名前以外の誰でもねーっつの、なぁ香澄」
「分かってるわよ、当たり前じゃない」

スズナの後に続いて三人も言った
これは、凄く、恥ずかしい

「ふふっ、青春だね」
「……スズナが言ったんじゃない」

私が言うと、皆が笑い出した
顔が赤いからだろう、自分でも分かる
その笑い声は、教室に響くチャイムで止まった

「あ、チャイムだ」
「座ろう、次は公民だ」
「うわ、あのジジィうるせーからなー」

続々と席につく皆に遅れたスズナは、私の耳元に近付く

「日本では兄妹はダメだけど、コードピアはどうかわからないよね……名前ちゃん、諦めないで、逃げないでね?」

それだけを言うと足早にスズナは席につく
私も急いで席についたのだけど、スズナの言葉が離れなかった

諦めないで
逃げないで

私は、一体何から逃げようとしているんだろう
少し前からあったもやもやが、また現われた気がした

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