麗姿 (委員長のお気に召すまま?!)
 茘枝(れいし)はその堅い皮を剥けば甘く香り、つるりと艶やかな丸い麗姿(れいし)を現す…。


 雲雀夫妻?(夫・推定十五歳?/妻・十八歳)、新婚?早々の出来事…。


 微熱を出しながらも応接室で風紀の激務?をこなす雲雀の為、美凰は午後の休憩時間に砕いた氷に浸していた茘枝の皮を丁寧に剥き始めた。

「草壁さんからの差し入れ、とっても美味しそうですね。わたし“茘枝”って大好物なんです…」

 とろんと眠そうな目つきをしていた雲雀は、書類から顔を上げると綺麗な眉宇を顰めた。

「まあ、楊貴妃体型の君だから“茘枝”好きってのは頷けるけど…。(ふぅん…。美凰は“茘枝”が好物なんだ。これからは週一で草壁に調達させるとしよう。あと夜のデザートにもいいね。最近読んだ小説によれば“茘枝”ってアレだしさ…、ワォ!) それにしても熱あるの僕なのに、なんで君の好物を差し入れるわけ? 咬み殺されたいのかな?」

 美凰は些か低気圧げな雲雀に苦笑した。

「よ、楊貴妃体型って…。ううっ…、ま…、まあ、いいじゃありませんか。とっても美味しいですし、美容にもいいんですから。はい…」

 複雑げな微笑みを浮かべつつ、美凰は雲雀の口許に透き通る甘い果実を差し出した。所が雲雀はぷいっとそっぽを向いて口を開けずにいる。

「どうしたんですか、恭弥さん? あ〜んしてくださいな」
「やだ。この前みたいに“口移し”で食べさせてよ」

 雲雀の艶っぽい口調に、美凰は真っ赤になった。

「またそんな我侭を…」

 黒曜石の双眸が悪戯っぽく煌く様子が、夫を恋い慕う美凰の心を熱く溶かす。

「ねぇ、早くしてよ…。折角剥いてくれたのに温くなっちゃうでしょ!」
「だって…、羞かしいし…」
「羞かしがることないじゃない。僕達夫婦なんだからさ…」
「もう…、本当に仕方がない人なんだから…」

 羞恥にぶつぶつ呟きながらも小さく口を開けた美凰は冷涼甘い果実を唇に挟み、愛する雲雀の口許に顔を近づけた。

「んっ…」

 雲雀の唇が美凰の唇に覆いかぶさって“茘枝”を受け取り、ゆっくりと咀嚼する。
 そのまま柔らかなリップ音と共に甘いキスを交し合った後、雲雀の口腔からは独特のジューシーな芳香が漂った。

「…。美味しいですか?」

 雲雀はくつりと笑っている。

「悪くないね。君の唇も、“茘枝”の味も…」
「まあ…」

 美凰は美しい花顔をほんのりと桃色に染め、うっとりと雲雀を見つめた。

「じゃ、次は僕からのお返し…」
「えっ?! なっ?!」

 雲雀は未だ美凰の指先につままれているつるんと剥かれた甘い果実を口に含むと、呆然としている美凰の唇をそのまま甘咬みした。

「はうぅぅっ?! んっ! んんんっ…」

 混ざり合った果汁と唾液が含み切れずに美凰の口の端から滴り落ちる様に、新妻の得も云われぬ色香が溢れる。
 そして彼女の総てを愛してやまない雲雀を虜にするのだ。
 濃厚なキスから逃れた美凰は、陸に上がった魚の様に口をぱくぱくさせて深呼吸を繰り返しながら口移しされた果実を嚥下する。
 そんな美凰の様子をほくそえみつつ、雲雀は果実の雫が垂れている美凰の白い指をゆっくりと舐めしゃぶった。

「どう? 美味しかったかい?」
「えっ…、ええ…。とっても…、おいし…」
「そう。よかったね」

 頭から湯気が出そうな勢いの美凰に、雲雀は口角を上げた。

「ねぇ、知ってる? この間読んだ楊貴妃の小説に載ってたんだけどさ、“茘枝”はね、陽の食物だから“血の巡り”が凄くよくなるんだって…」
「そ、そうなんですか?」

 言葉の意味が解らない美凰は、意味深げな雲雀の様子に小頸を傾げた。

「つまりね…」

 そういうと雲雀は美凰の身体を抱き寄せ、執務椅子に座る自分の膝の上にしっかりと乗せてしまった。

「あっ! ちょっ! な、なんなんですかっ! き、恭弥さんってば! き、綺麗な顔が、ち、近いんですけど! やっ! こ、この手はなんなんですかっ! 胸、触らないでくださいっ!」
「君、僕の熱を心配するふりをして、“陽の食物”を奨めるなんて、いい度胸してるよね?」
「えっ?! ひゃあっ!」

 頸筋をぺろりと舐められた美凰は快感に身を顫わせた。

「僕の血気を向上させた責任を、取って貰わわないといけないってことで…」

 そう云うと、雲雀は手馴れた仕草で美凰のブラウスのボタンを外し始めた。

「なにをやって…、熱が上がっちゃいますよ…」

 泣きそうな顔をしている美凰を、雲雀は愛しげに見つめた。

「心配要らないよ。風邪酷くなったら…、つきっきりで看病して貰うし…」
「やっ! ち、ちょっと、あ、あぁん…」
「悪寒がしたら…、また君の肌で温めてもらって…、気持ちよくして貰うし…」
「もう…、恭弥さんの…、いじわる…」
「そう? 仕掛けてきたのは君だと思うけど?」
「も…、いいです…」



 それから夕刻の校内見廻り時間まで、応接室からは互いに茘枝を食べさせ合いながら愛し合う風紀委員長とその妻の睦言が、甘い果実の芳醇な香りに包まれて柔らかく響き渡っていたとか…。

(委員長も姐さんも(主に委員長ですが…)、お気持ちは解るのですが、少しでいいので時と場所を弁えて戴きたいです…。by草壁哲矢/涙の証言)


 茘枝(れいし)はその堅い皮を剥けば甘く香り、つるりと艶やかな丸い麗姿(れいし)を現す…。

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