悪戯希望 (委員長〜)
「Trick or Treat!」

 突然、バスルームのドアが開かれて叫ばれたハロウィンの科白…。
 ほんわりした湯気の中、薔薇の香りのボディーソープを泡立てながら白い肢体を擦っていた美凰は、背後からいきなり抱き締められて驚愕した。

「ち、ちょっと! 恭弥さんったら急になあに? きゃんっ!」

 手にしていたスポンジは取り上げられ、身体の自由は奪われる。

「だからTrick or Treat!って言ってるでしょ」

 びしょ濡れの美凰は美しい双眸をまん丸にして雲雀を見上げ、狼狽した。

「そ、そそそ、そんなこと急に言われても…、お風呂にお菓子なんか…」
「じゃ『悪戯希望』だね?」
「もう! なに勝手なこと言ってるの?! 第一、ハロウィン行事なんて恭弥さんに似合わな…、あっ! 駄目っ!」

 豊満な胸の膨らみを掴まれた美凰はじたばたと身もがいた。

「『悪戯希望』だよ。僕がすみずみまで丁寧に洗ってあげる…」
「やだっ! じ、自分で洗うわ! んっ! や、やだってば!」
「ちょっと、暴れないでよ! ちゃんと洗ってあげれないだろ!」
「だ、だから自分で洗うって…、あっ! ああんっ!」

 雲雀の手が下腹部に伸びてゆく。

「ここは…、特に念入りに…」
「きゃっ! 変なとこ触らないで! あ、洗うって言ったくせに…、な、撫でなくてもいいの!」
「でも…、撫でて欲しがってるよ…」
「ほ、欲しがってません! あっ! 駄目っ! だめだってばぁ…」

 きゅうっという甘い声で美凰の喉が鳴り、仰け反った白い頸筋に雲雀の唇がちゅっと吸いついた。

「やっぱり『悪戯希望』でしょ?」
「……」
「美凰?」

 にやりと口角をあげた雲雀の腕の中で、美凰は潤んだ瞳で甘く囁いた。

「…、もう…、恭弥さんの、莫迦…」
「莫迦で結構だよ。…、美凰狂いの…、莫迦だからね…」

 骨ばった長い指がシャワーの栓を捻り、寡黙な唇が花弁の様な甘い唇に熱いキスを与える…。

「こういうロマンチックが…、君好みなんだろう?」
「……」

 降り注ぐ温かな雫の中で、クリームの様な泡に包まれたお姫様は、意地悪な王子様に悪戯されて蕩けてしまいましたとさ…。

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