膝枕 (蒼いくちづけ)
 うららかな快晴の屋上で柔らかな恋人の膝を枕に、雲雀は恍惚としていた。
 優しい繊手にずっと頭を撫でられている心地良さに、このまま刻が止まってもいいとさえ思いつつ…。



 どれ程の刻をそうしていただろう?
 流石に風が身体に冷たく感じる様になってきて、自分の身よりも遥かにか弱い美凰の身を心配した雲雀がゆるゆると目を開け、己の額辺りをそっと愛撫し続けていた恋人の手を取った。

「…、そろそろ応接室に戻ろうか?」

 上半身を起こし立ち上がった雲雀が、座ったままの美凰を名残惜しげに流し見る。
 所が美凰は、少しだけ花顔を引きつらせて雲雀を見上げていた。

「美凰? どうしたの? 気分でも悪いの?」

 美凰はそっと繊頸を振り、羞かんだ様子で小さく呟いた。

「…、ご、ごめんなさい…。あのう…、気分は、悪しくないのですけれど…、あのう…」
「なんだい? どうかした?」

 慌ててしゃがみ込み、繊肩に手をかけた雲雀に向かって美凰は「あっ」と声を上げた。

「あ、足が…」
「足? 痛むの?」
「い、いいえ…。あのう…、し、痺れて…」
「は?」

 雲雀は一瞬、眼を丸くして美凰を見つめていたが、やがて破顔するや噴出した。

「ま、まあ! そ、そんな風に…、お笑いになるなんて…」
「ごめん、ごめん! 僕の頭のせいで足が痺れてしまったんだね? どれ…」

 そう云うなり、雲雀は軽々と美凰を双腕に乗せて抱き上げてしまった。

「あぁんっ!」

 華奢だが力強い右腕の先にぶらんと垂れている膝から下が、じんじんと不快な波紋を送ってくる感覚に耐え切れず、洩らした喘ぎ声がとても艶やかに聞こえたのは雲雀の願望なのか。

「ちょっと! そんな声を出さないでくれる? 折角我慢しているのにさ…」
「そ、そんなこと仰っても…、うぅっ…、あぅ…」

 雲雀が歩き出すと、揺れ動きによって不快な波紋が強烈に美凰の五体を襲った。

「ふぅん…、ぅく…」

 波紋に耐える為か、情けない表情を見せたくないのか、美凰は思わず恋人の首に腕を廻し、力を籠めて雲雀の首筋辺りに花顔を埋める。

〔知らずに僕を煽ってくれてるんだから…。なんて厄介な恋人なんだろうね!〕

 雲雀はしがみついてくる美凰の様子にご満悦の体で、だが、発散されぬ欲望の解消方法を求めて徒に恋人の身体を揺さぶりながら足の痺れを刺激し、更に愛しい美凰を自分の身体にしがみつかせるという甘い悪戯を繰り返しつつ、ゆっくりと屋上を後にして応接室へと歩み始めた。
 この後どうやって秘密の小部屋へ美凰を連れ込み、彼女の肌を存分に味わおうかという策謀を頭の中で目まぐるしく巡らせながら…。

_14/37
[ +Bookmark ]
PREV LIST NEXT
[ NOVEL / TOP ]
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -