「胸…」
ひくく響くこの声を、耳に心地良く感じていることを懸命に否定する。
二度の情交の後、ぐったりとしていたわたくしは命じられるままに自らの乳房を持ち上げた。
膝立ちになっている恭弥さまの前に跪き、萎えたものを豊かな膨らみで挟み込む。
熱く尖った乳首が筋肉質な太腿に擦られ、身体中に顫えが奔る程の美快を催した。
恭弥さまは心地良さげにくつくつと笑う。
心を伴っていなくても、わたくしの奉仕する姿が恭弥さまの征服欲を満たしているらしい。
「本当に…、淫乱な女だね? いい顔してるよ…」
「……」
そんな罵りの言葉も聞き慣れた。
わたくしは無言のまま、少しずつ熱い滾りを取り戻してきたそれを懸命に刺激し続ける…。
「うっ…、ああ…、いい、よ…」
華奢ではあるが筋肉質な身を屈めた恭弥さまは喘ぎ声のまま、再び命じた。
「…、口…」
「……」
わたくしは大きくなりつつある恭弥さまの中心を胸の谷間で扱きながら、命じられるままにその先端を舐め始める。
教えられた通りに、唇と舌を使って焦らす様に恭弥さまを翻弄する。
暫くして、恭弥さまの口許が快感に歪んだ。
「くっ…、ぅあっ…」
「……!」
そそり立つ恭弥さまの先端から、白濁の精が勢いよく飛び散った。
何度もしている奉仕だが、進んで嚥下したいものではない。
ぱっと顔を背けて仰け反った瞬間、とどまることをしらない迸りはわたくしの顔や胸を淫らに汚していった。
ほんの数瞬、肩で息をしていた恭弥さまは多量の飛沫に塗れ、暫しぼんやりしているわたくしを冷たい声で促した。
「拭って…」
「……」
わたくしは身を屈め、ゆっくり臥台に横たわりながら羽根枕を背に脚を投げ出している恭弥さまの萎えたものを口に含む。
手でそっと扱きながら舌を遣って丁寧に舐めしゃぶり、口腔で吸い上げる。
恭弥さまのすべらかな太腿が小刻みに揺れる。
乱れ散るわたくしの髪と口の動きがあいまって、性感を刺激するらしい。
大きな両手がわたくしの頭にかかり、髪の毛を指で梳き始めた。
恭弥さまの口からひくい喘ぎ声が漏れ始める。
途端に口腔の中のものがむくむくと頭を擡げ、わたくしの口いっぱいに漲りだす。
暫くして、恭弥さまの両手がわたくしの頭を押さえつけた。
「嚥んで…。一滴でも…、吐き出せば…、やり直しだよ…。くっ…」
「……」
口の中で恭弥さまが熱く弾けた。
わたくしは嘔吐感を堪えながら、懸命に恭弥さまが吐き出す欲望の塊を嚥みくだした…。
精の匂いと残滓に咳き込んでいたわたくしに、恭弥さまは水を含ませてくださった。
ひと心地ついたわたくしに向かって、恭弥さまは続けて言った。
「やって…」
「……」
恭弥さまの眼の前で大きく脚を広げたわたくしは、自慰行為に耽り始めた。
ひとときの休息を取る恭弥さまは閨房用にいつも準備させてい葡萄酒を口に含み、その甘さに顔を顰めながら淫らな双眸を黒々と輝かせて、淫音を響かせるわたくしの秘処をじっと見つめる。
そして見られているという事象で、わたくしに屈辱を与えるのだ。
それでも逆らうことは許されない。
恭弥さまは楽しげに眼を細め、いつもの様に鏡の準備を始めた…。
「もっと擦って…」
「……」
わたくしは花弁のはざまを指でかきならした。
じんわり広がる快楽に戦慄が走る。
「あっ…」
枕元に鏡を立てかけて準備を終えた恭弥さまは、ナイトテーブルに飲み干した空のグラスを置くとわたくしの身体に身を寄せて秘処に手を這わせ、とろとろと溢れ出る蜜を指で掬い、わたくしの顔を覗き込む様にしながら濡れた自分の指をしゃぶり、わたくしの淫蜜を味わっていた。
「淫乱だけど、君のこれは…、美味いよ…。もっとね…」
「……」
「指、一本挿れなよ…」
言われた通りに指を挿れると、快楽に肌がざわめく。
恭弥さまはにやりとほくそ笑むと喘いでいるわたくしの唇を接吻で塞ぎながら、再び蜜を掬って疼いている乳首に塗りつけながら乳房を揉みあげた。
「あっ、うっ…」
ぬるぬるする乳首が摘ままれ、その快感に呼応して花園の深奥から多量の蜜が噴き零れる。
わたくしは身を捩って接吻を逃れようとした。
「拒否は許さない…」
「あっ…」
「二本目を…」
言われるままに二本目の指を挿入し、稚拙に攪拌する。
その瞬間、蜜塗れの指で摘ままれているのとは反対側の乳首を恭弥さまの唇に強く吸い上げられ、わたくしは悲鳴を上げて仰け反った。
「あっ、くっ…、お、お許しを…」
「まだまだだよ…。もっとやって…」
「あっ、んぁっ…、あ、あっ…」
いつの間にか、恭弥さまはわたくしの背後に廻って、双の乳房を揉みしだきながら、わたくしの耳朶や頸筋に唇を寄せてくちづけの雨を降らせていた。
目の前にある鏡がわたくしの淫らな姿をみせつけ、恭弥さまの興奮を誘う。
乳首が弾かれ、揉みこまれる度に自分の中心部の奥がじゅわじゅわと蠢くのが感じられる。
いつしか…、わたくしは大きく脚を広げ、あられもなく自分を慰めることに夢中になっていた。
そんなわたくしを、恭弥さまは鏡を通して愉悦の表情で眺めていた。
「イって…」
「はっ…、うっ…」
「僕の前で、淫らにイきなよっ!」
そういうと、恭弥さまはわたくしの背後をとったまま、片手で左の乳首を摘まみ、脇から頭を回して右の乳首を口腔に含んで強く吸いながら、最後に残った右手をわたくしの股間に伸ばしてぷっくりと膨れ上がった花珠を摘まみあげ、一瞬でわたくしを忘我の極みに押しやった…。
「ひっ! ひあぁぁぁっ!」
極限の快楽になす術を失ったわたくしは、そのまま失神してしまった…。
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