電話で愛の言葉


最期は、一本の電話だった。
突然鳴り響き、デバイスに飛び込んできた着信音に狡噛は目を見張った。浮き上がった液晶から漏れるのは、紛れもなく彼からの。

『コウか?』
「さ、さ…やま?」
『良かった、お前は無事だな』
「お前…どこにいるんだ!3日も戻らないで!」
『ちょっとヘマしてな。だが、最後に声だけでも聞けて良かった』
「何を…言ってる?」

佐々山の偽りない言葉に狡噛の喉がかさかさと渇く。足元から血の気が引いていく。
感じたことのない焦り。
恐怖。いや、圧倒的な危機感。

『そういえば言ったことがなかったな』
「そんな事より、今どこにいる?怪我はないのか?」
『コウ、』  

愛してる。 

小さな愛を紡ぐ声が無機質な機会を通じて狡噛に届いた頃。佐々山の命はそこで絶たれた。そして。
その時既に佐々山の体が無残に切り刻まれていたのを狡噛が知ったのは、後になってからのことだった。


2013.2.7




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