おでこにキス


「な?いーじゃん」

キスしてもよい?互いに気持ちを確認しての開口一番に狡噛は頭を抱えた。
常々クソ野郎だとは思っていたが、ここまで手が早いとは思わなかった。狡噛がじとりと睨みあげても、目の前の男が気にする様子はない。

「お前…いつもそんななのか」
「まさか」
「そうだよな…悪い」

いくら佐々山だってもう少し考えるだろう。そう思った矢先。

「いつもなら先にやっちまうけどな」
「…お前っ、」
「けど強姦はしてねーよ?お互い気持ちよかったらそれでいーしさ。まあ、コウが強姦のほうが好みってならしてもいーけど」
「このクソ野郎!」

遠慮なく頭を殴りつける。派手な音がしたが、この男にはこれくらいで丁度良い。

「って〜…!お前、俺にだけ凶暴じゃね?」
「お前が悪いんだろう」
「お前だけだよ」
「は?」
「こうしてちゃんと順序踏んでるのは、お前だけ。それのどこが悪いんだ」

真剣な眼差しの佐々山に、思わず絶句する。お調子者で、手が早くて、節操がない――どうしようもない男からこんなことを言われれば、誰だって絆される。

「目瞑れ」
「あんたからしてくれるのか?」
「嫌ならやめる」

佐々山は慌てて目を閉じた。
本当にこういう時だけ素直なのは佐々山らしいというか、何というか。

「…絶対に開けるなよ」

そして、至近距離で息を呑み。
ちゅ。

「お、終わったぞ!」
「…監視官」

離れようとする手を強く取られる。

「もしかして今のがキス?」
「当たり前だろ」
「おい、いまどきおでこにちゅうって…」

呆れたように息を吐く佐々山の頭を殴り、彼が何かを言うより早くその場を去った。
きっと佐々山は苦笑いを浮かべているだろう。

だって、仕方ないだろ。
ただ触れるだけでこんなにも胸がドキドキするんだから。


2013.2.8




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